ちょっと真面目チョット皮肉 135
石山祐二 *
インド、インドネシア、日本からのメンバー3 名がシンガポールで、2011 年3 月にノン・エンジニアド建物の耐震性を高めるガイドラインの改訂作業を行った (「建築の研究」2010 年4 月の本欄参照)。シンガポールを初めて訪れたので、その際に感じたことを述べてみたい。
シンガポールはマレー半島の南端の島が国土で、マレーシアとは橋で繋がっている。1965 年にマレーシアから独立したシンガポールの人口は約500 万人で、1990年代半ばに先進国となっている裕福な国である。
デパート、専門店が道の両側に並んでいるオーチャードロードは銀座やハワイのワイキキより広く活気が満ちている。道路はきれいに清掃されており、路上のゴミを見つけることが難しいくらいである。街を歩いていて不安を感じることはなく、犯罪が少ない安全な国である。もっとも、犯罪が全くない訳ではないので注意が必要とガイドブックには書いてある。
安全で清潔であることが主要産業の貿易・金融というビジネスにも観光にも直結しているので、色々な規制や罰則も厳しい。例えば、自転車に乗ったままでの通行が禁止されている地下道では、違反すると罰金が1000 ドル(約7 万円)である(写真1)。街や公園の中でペットを連れている人を全く見かけないし、もちろん犬の落とし物も見ることはない。この理由は、ペット類は自分の敷地内のみで飼育が許されているからである。
建物の外観は日本に比べてカラフルで、アルゼンチンのカミニートのように外壁をあざやかな色彩に塗り分けている場所もある。建物形状もいろいろで、構造的に整形な建物は少なく、どこかに不整形な部分がある。建物を耐震的にするためは、建物形状は整形な方が好ましいが、地震があまり起こらない当地では、そのようなことを全く考えている様子がない。それより、建物が直方体のような整形に見えても、どこかに変化を付け、あえて不整形にしている。
イギリス領時代の旧い建物もあり、また近代的な建物も多く、街を単に歩いているだけでも楽しい。2010 年にオープンしたマリーナ・ベイ・サンズ・ホテル(写真2)は遠く離れた所からも人目を引く。55 階建の3 棟の合計で2561 の客室があり、最上階にはサーフボートのような形状の屋上庭園が3 棟の上に乗っている。
最後に、有名なマーライオン像であるが、それを取り囲むように客室が一つのホテル(数ヶ月間使用する臨時的なもの)が建設中で見ることができなかった。その代わりにすぐ近くにあるミニ・マーライオン(写真3)の写真を撮っている観光客が多かった。シンガポールの名所であるマーライオンとスコールで閉鎖されていた屋上庭園を見ることができなかったので、次回の楽しみに残しておこうと思って帰国した。
* いしやまゆうじ 北海道大学名誉教授
(社団法人)建築研究振興協会発行「建築の研究」2011.4掲載