2022年2月7日

No.190 設計用地震力の分布を表す Ai の導き方

ちょっと真面目チョット皮肉 No. 190

石山祐二*

1981 年から用いられている日本の耐震規定(新耐震)では、上階ほど大きくなる設計用地震力(地震層せん断力係数)の分布を次の Ai で表している。

ここで、αi i 階の基準化重量、T は(高層になるほど大きくなる)建物の固有周期 (s) である。

Ai をグラフで示したのが図 1a) で、(T の値に応じて)複数の曲線(T = 0 の場合は直線)となっている。Ai に αi を乗じると図 1b) の 1 階で 1 となる(基準化)地震層せん断力 Qi/Q1 = Ai αi となる。

図 1 Ai と地震層せん断力の分布

いずれも縦軸が αi、低層・超高層にかかわらず最上階で最小、1階で最大の 1.0(図 2)となる非常に便利なパラメータである。

図 2 各層等重量の 2,5層建物の基準化重量αi
図 3 Ai を構成する 3 種の地震層せん断力分布

 

図 1b) は左上端から右下端を結ぶ上に膨らんだ複数の曲線からなっている。これらの曲線は図 3 の実線の直線 a(式で表すとαi)、破線の(左に開いた)放物線 b(2αi - α2i )、点線の(上に凸の)放物線 c (√αi)を組合せたもので、放物線 b と直線 a の差を d1、放物線 c と直線 a の差を d2 とすると、これらの曲線は直線 aに k1d1k2d2 を加えたものとして次のように表すことができる。

上式をαi で除すと次の層せん断力係数が得られる。

上式で k1= k2=2T/(1 + 3T) とすると(1) 式となる。

このようにして Ai を導いたが、(海外の耐震規定でよく用いられている)高さ h の代わりにαi を用いていることには是非注目して欲しい。図 3 の直線 a(旧耐震で用いられていた建物の上階も下階も同様に揺れる「震度一様分布」)、曲線 b(世界各国で用いられている上階ほど直線的に大きく揺れる「震度逆三角分布」)、曲線 c(基礎固定一様せん断棒が基礎にホワイトノイズを受ける際の層せん断力の分布で超高層の鞭振り現象を表す「√αi分布」)を容易に式で表すことができ、上に示したように式の誘導も容易になる。なお、超高層の鞭振り現象を表すため最上階に集中地震力(ニュージーランドの規定ではベースシヤの 8%)を加える規定もあるが、√αi 分布の方が適用範囲が広い。しかし、αiや√αiを耐震規定に取り入れている国は日本のみである。

Ai の最後の 2T/(1 + 3T) については、T = 0 とするとこの値が 0 となるので Ai = 1.0(図 1a,b の直線と図 3 の直線 a)となり、T が大きくなると図3 の曲線 b と c の影響が徐々に大きくなる。T =∞では 2T/(1 + 3T)=2/3 となり、これは T がいくら大きくなっても中間階の地震層せん断力が最下階よりは大きくならないようにした結果である。

Ai は用いられてから 40 年以上も経過している。今振りかえると、(2) 式の表現はよいが k1 = k2 =2T/(1 + 3T) としたのは旧耐震に拘りすぎたかも知れない。2T/(1 + 3T) の中の 1 は必ずしも 1 である必要はなかったが、たまたま 1 として計算してみた結果、良さそうな式となり提案した次第である。最後に、T の代わりに地盤周期 Tc を用いて 0.6T/Tc としておけば(第 2 種地盤では Ai と同一になる)、もう少し洗練された式になったとも思っている

 

 


*いしやまゆうじ 北海道大学名誉教授
(一社)建築研究振興協会発行「建築の研究」2022.1 原稿

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