ちょっと真面目チョット皮肉 161
石山祐二 *
カナダ北東部のプリンス・エドワード島を 30 年振りに訪れた。 Prince Edward Island はカナダでは通常 P.E.I.(ピー・イー・アイ)と呼ばれている。カナダの 10 州の中で最も小さな州( Province)で、三日月形のゆりかごに似ていて鳥が羽を広げたような形状の島の面積は約 5,660km2(愛媛県とほぼ同じ)、人口 14 万 5 千(州都シャーロットタウンの人口は約 3 万 5 千)で、緯度的には稚内より少し北に位置する。
写真1 グリーンゲイブルズ(緑の切妻屋根)
P.E.I.が有名なのはルーシー・モード・モンゴメリ著「赤毛のアン」、原題は Anne of Green Gables(緑の切妻屋根のアン、写真 1)の舞台があるからに違いない。日本語訳の出版の際に「赤毛のアン」となったことは 2014 年 NHKの朝の連続ドラマで知った人も多いであろう。この書名となったことが、特に日本でよく読まれる原因であるらしい。
1985 年に当地を訪れたのは、カナダの建築研究所に客員研究員として首都オタワに 1 年間滞在していた時のことである。 P.E.I. までの 1,200km を車で途中 2 泊して行き、帰りは(途中のモーテルが満室だったので)1,200km を多少休憩したが一気に運転し、午前 2 時過にオタワに戻ったことを思い出した(1994 年 2 月紹介)。今回はトロント空港でレンタカーを借り、 P.E.I. まで 1,600km を途中 3 泊程度で行く計画を立てた( P.E.I. には航空機やフェリーを利用しなくとも橋が架かっていて車で行くことができる)。それでも、連日 500km 程度は運転する必要があり、多少の不安はあったが、ほぼ予定通りトロント空港に戻ったときの全走行距離は 3,700km であった。
さて、 1997 年にグリーンゲイブルズは火事となり、その際にグリーンゲイブルズのコピーを建てた北海道芦別市が保管していた図面などを P.E.I. に送ったということがあった( 2002 年 6 月紹介)。このためグリーンゲイブルズはどうなっているのかと心配していたが、火事はぼや程度であったので 30 年前と同じであった。
写真2 裏庭に建設された納屋
少し変わっていたのは、周囲が整備され、建設当初の記録に基づいて数棟の納屋が建設されており(写真 2)、納屋の一部はトイレと小さな売店となっていた。周囲の樹木や花壇も整備され、木製の白い塀も建設されていた(写真 3)。「恋人たちの径」や「悪魔の森」も散策できるように残されていたが、残念ながらその先はゴルフコースであった。特に、悪魔の森の先はうっそうとした森が続くのではなく、すぐにゴルフコースとなっていた点については、(ゴルフが好きな私でも)感心できなかった。 P.E.I. がカナダの中で最も小さい州とはいえ、土地は十分ある。ゴルフコースの中にグリーンゲイブルズがあるようになってしまったことには不満であったが、その他はすべて満足し、 2 週間ほどの旅行を楽しんできた。
写真3 木製階段を下ると悪魔の森
* いしやまゆうじ 北海道大学名誉教授
(一社)建築研究振興協会発行「建築の研究」2015.8 原稿