2015年8月27日

No.161  30年振りのプリンス・エドワード島

ちょっと真面目チョット皮肉 161
石山祐二 *

カナダ北東部のプリンス・エドワード島を 30 年振りに訪れた。 Prince Edward Island はカナダでは通常 P.E.I.(ピー・イー・アイ)と呼ばれている。カナダの 10 州の中で最も小さな州( Province)で、三日月形のゆりかごに似ていて鳥が羽を広げたような形状の島の面積は約 5,660km2(愛媛県とほぼ同じ)、人口 14 万 5 千(州都シャーロットタウンの人口は約 3 万 5 千)で、緯度的には稚内より少し北に位置する。

cyot161_img_0写真1 グリーンゲイブルズ(緑の切妻屋根)

P.E.I.が有名なのはルーシー・モード・モンゴメリ著「赤毛のアン」、原題は Anne of Green Gables(緑の切妻屋根のアン、写真 1)の舞台があるからに違いない。日本語訳の出版の際に「赤毛のアン」となったことは 2014 年 NHKの朝の連続ドラマで知った人も多いであろう。この書名となったことが、特に日本でよく読まれる原因であるらしい。

1985 年に当地を訪れたのは、カナダの建築研究所に客員研究員として首都オタワに 1 年間滞在していた時のことである。 P.E.I. までの 1,200km を車で途中 2 泊して行き、帰りは(途中のモーテルが満室だったので)1,200km を多少休憩したが一気に運転し、午前 2 時過にオタワに戻ったことを思い出した(1994 年 2 月紹介)。今回はトロント空港でレンタカーを借り、 P.E.I. まで 1,600km を途中 3 泊程度で行く計画を立てた( P.E.I. には航空機やフェリーを利用しなくとも橋が架かっていて車で行くことができる)。それでも、連日 500km 程度は運転する必要があり、多少の不安はあったが、ほぼ予定通りトロント空港に戻ったときの全走行距離は 3,700km であった。

さて、 1997 年にグリーンゲイブルズは火事となり、その際にグリーンゲイブルズのコピーを建てた北海道芦別市が保管していた図面などを P.E.I. に送ったということがあった( 2002 年 6 月紹介)。このためグリーンゲイブルズはどうなっているのかと心配していたが、火事はぼや程度であったので 30 年前と同じであった。

cyot161_img_1写真2 裏庭に建設された納屋

少し変わっていたのは、周囲が整備され、建設当初の記録に基づいて数棟の納屋が建設されており(写真 2)、納屋の一部はトイレと小さな売店となっていた。周囲の樹木や花壇も整備され、木製の白い塀も建設されていた(写真 3)。「恋人たちの径」や「悪魔の森」も散策できるように残されていたが、残念ながらその先はゴルフコースであった。特に、悪魔の森の先はうっそうとした森が続くのではなく、すぐにゴルフコースとなっていた点については、(ゴルフが好きな私でも)感心できなかった。 P.E.I. がカナダの中で最も小さい州とはいえ、土地は十分ある。ゴルフコースの中にグリーンゲイブルズがあるようになってしまったことには不満であったが、その他はすべて満足し、 2 週間ほどの旅行を楽しんできた。

cyot161_img_2写真3 木製階段を下ると悪魔の森


* いしやまゆうじ 北海道大学名誉教授
(一社)建築研究振興協会発行「建築の研究」2015.8 原稿

連載「ちょっと真面目チョット皮肉」(北海道大学名誉教授 石山 祐二) No.134 花嫁人形と蕗谷虹児 No.135 清潔で安全なシンガポール No.136 広瀬隆著「東京に原発を!」を読み直して No.137 最近の建物の耐震設計に対する懸念 No.138 日本最北のヴォーリズ建築「ピアソン記念館」 No.128 「赤れんが庁舎」を美しく後世に残そう! No.139 建築と食卓の「bと d」 No.140  津波対策にも New Elm工法! No.142  津波に対する構造方法等を定めた国交省告示 No.141 建物の基礎と杭の接合は過剰設計! No.143 国際地震工学研修50 周年 No.144 ペルー国立工科大学・地震防災センター創立 25 周年 No.27 着氷現象と構造物への影響 No.145 リスボンは石畳の美しい街、しかし・・・ No.146 トンネル天井落下事故の原因 No.147 積雪による大スパン構造物崩壊の原因と対策 No.148 生誕100 年彫刻家佐藤忠良展 No.149 地震工学に用いる各種スペクトル (その1)  :応答スペクトル No.150 地震工学に用いる各種スペクトル(その 2) :  トリパータイト応答スペクトルと擬似応答スペクトル No.151 地震工学に用いる各種スペクトル(その 3)  :要求スペクトルと耐力スペクトル No.152 地震工学に用いる各種スペクトル(その 4): 要求スペクトルと耐力スペクトル No.153 中谷宇吉郎著「科学の方法」:氷の結晶のV字型変形 No.154 新渡戸稲造と武士道 No.155 これからのフラットスラブ構造 No.156 塩狩峠記念館 三浦綾子旧宅 No.157 ニッカウヰスキー余市蒸留所 No.158 三つの人魚像 No.159 ラオスと建築基準 No.160 北海道博物館2015 年4 月開館 No.161  30年振りのプリンス・エドワード島 No.162 道路標識と交通信号機 No.163 童謡「赤い靴」の女の子 No.164 地すべりと雪の上の足跡 No.165 建築物のダイヤフラム、コード、コレクターと構造健全性 No.166 地震による 1 階の崩壊と剛性率・形状係数  No.167  北海道新幹線と青函トンネル No.168 米国の建築基準と耐震規定の特徴 No.169 北海道三大秘湖の一つ「オンネトー湖」は五色湖 No.170 世界遺産シドニー・オペラハウス No.171 シドニー・オペラハウスの構造 No.172 北海道の名称と地名 No.173 鳩を飼わない「ハト小屋」 No.174 ロンドン高層住宅の火災の原因は改修工事!? No.175 断熱性能を示す Q 値、U A 値とその単位 No.176 幻の橋タウシュベツ川橋梁 No.177 広瀬隆著「原発時限爆弾」を読んで! No.178 2018 年北海道胆振東部地震とその被害 No.179 地震にも津波にも強いブロック造の現状と将来 No.180  ISO の地震荷重と日本・EU・米国との比較 No.181  日本・ペルー地震防災センターの国際シンポジウムに参加して No.182  フィリピンは破れ・日本は芋?! No.183  ブレーメンの音楽隊とサッカー No.184 時間の単位は「秒,分,時,日,月,年」,その次は? No.185  サッカーボールの形と構造の変化 No.186  円周率を最初に計算したのは? No.187  JIS A 3306 となった ISO 3010「構造物への地震作用」 No.188  建物の整形・不整形を表す剛性率 No.189 水道水が美味しいのはどこ? No.190 設計用地震力の分布を表す Ai の導き方 No.191 美味しかった食べ物とギリシャ文字 No.192 構造物のロバスト性 No.193 ラーメンvsトラスと2つの鉄塔 No.194 久しぶりの海外でコロナ感染! No.195 長さの単位と建築のモデュール No.196 関東大震災100年「大地震とその後の対策」 No. 197 北海道の「挽歌」と「石狩挽歌」 No.198 トルコ共和国建国100年と地震被害 No. 199 耐震性を向上させる強度と靱性、どちらも重要であるが・・・ No. 200 最終回の御礼 各種ダウンロード リンク
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