ちょっと真面目チョット皮肉 159
石山祐二 *
ラオスはインドシナ半島の中央に位置し、東はベトナム、南はカンボジア、西はタイ、北はミャンマーと中国に接していて、海には面していない国である。人口は約 650 万、面積は日本の本州程度の 24 万km2、首都ビエンチャンの人口は約 70 万である。
ビエンチャンの観光名所として、仏舎利が納められている高さ 45m の金色に輝くタート・ルアン(写真 1 )とパリの凱旋門を模した戦没者慰霊塔パトゥーサイ(写真 2 )が有名である。
市街地の主要道路に面しては 3 階建の建物(写真 3)が多く、1 階には庇(ひさし)が連続して突き出ているのが特徴的である。中層の建物の多くはホテルやオフィスである。
市の中心部には高層建物はほとんどないが、郊外のタート・ルアン湖経済特区では高層建築物が多数建設中(写真 4 )で、計画では人口 15 万としている。この他にも、ホテル、マンション、オフィスを含む大型ショッピングセンターも数カ所計画されており、急激な経済成長が見受けられる。もっとも、人口 70 万の都市に人口 15 万の新たな街が本当にできるか心配ではあるが、工事は(多少の遅れはあるようだが)着々と進んでいる。
このような高層建物、大規模建物の建設ラッシュにもかかわらず、ラオスには建築基準はない。このため、公共事業運輸大臣自ら司会を務めた「建築基準セミナー」が 2015 年 2 月にビエンチャンで開催された。ラオス側は公共事業運輸省、消防庁、大学、地方政府、関係業界などから約 130 名、日本側は講師 3 名、国土交通省から派遣されている長期専門家 2 名と JICA 職員 1 名が参加した。日本側から建築規制制度、構造基準、防火基準などの講演を行い、ラオス側からは建築基準(案)の説明などの後、活発な意見の交換・討論などが行われた。地震や台風などによる災害は比較的少ないとはいえ、建築基準を制定し、安全・安心な建物を建設すべきとの意見に異論はないはずだが、(案)はあっても制定には至っていない。
最後にわずか 3 泊の滞在ではあったが、その間に感じたことを紹介したい。ラオスは治安もよく(ほとんどの人が仏教徒)、食事もビールも美味しく、物価も安く、(乾季のため)気温・気候も快適だった。観光客はメコン川をはさんだ隣国のタイや、欧米からの高齢者や若者が多いようである。ビエンチャンから空路 1 時間弱には町全体が世界遺産のルアンパバーンもある。日本からの直行便も計画されており、日本人観光客が急増するに違いないと感じて帰国した。
* いしやまゆうじ 北海道大学名誉教授
(一社)建築研究振興協会発行「建築の研究」 2015.4 原稿