ちょっと真面目チョット皮肉 143
石山祐二 *
建築研究所の国際地震工学センターで行われている地震工学研修が50 周年を迎え、国際記念シンポジウム「命を守る地震津波防災の実現に向けて」が2012 年6月に開催され(写真1)、その中ではパネルディスカッションも行われた(写真2)。ここで、国際地震工学研修の50 年を簡単に振り返ってみたい。


1960 年に第2 回世界地震工学会議が東京・京都で開催され、その際に途上国の若手研究者・技術者に対する地震工学研修の必要性が提唱された。これを受けて、同年に地震工学研修が東京大学で行われた。この研修は国際的な反響を呼び、ユネスコと日本政府の共同事業として継続的に行うことになり、1961 年には研修の前半が早稲田大学で行われ、後半は1962 年に建設省建築研究所に設けられた国際地震工学部に引き継がれ、それから50 周年となった次第である。
建築研究所はBuilding Research Institute (BRI) 、国際地震工学部はInternational Institute of Seismologyand Earthquake Engineering (IISEE) なので、英語ではInstitute の中のInstitute となっている。建設省建築研究所は独立行政法人建築研究所、国際地震工学部は国際地震工学センターとなり、日本語の名称は変わったが英語の表現は当初のままである。
1 年間の研修は、当初からの地震学コースと地震工学コースに、2006 年からは津波コースが加わり、毎年20数名の海外研修生が1 年間勉学に励んでいる(この他にいくつかの短期コースもある)。
研修は大学院修士課程と同等以上で、研修生から修士号の要望はあったが、IISEE は大学ではないため、要望に長年応えられなかった。2005 年からは政策研究大学院大学(National Graduate Institute for policy studies: GRIPS) と連携し、研修生には修士(Master)の称号が授与されている。修士号授与の実現は名実共にこの研修が評価されたことにもなり、研修生の一層の励みになっている。もちろん、試験に合格しない場合や修士論文が受理されない場合には、修士号は授与されない。このため、研修生自身の勉学も大変であるが、論文を指導するスタッフや指導を依頼された外部の先生達の苦労も大きいようである。幸い、今までのところ、最後まで研修を終了した全員に修士号が与えられている。
この50 年間に、97 カ国などから1539 名がIISEE の研修を受けている。その中から、50 周年を契機に地震災害の軽減に貢献してきた60 歳以上の元研修生11 名に名誉科学者、名誉技術者の称号が贈られた。このような制度も研修生の大きな励みになると思っている。
個人的なことで恐縮であるが、私自身スタッフとしてIISEE に在籍したことがあり、その当時に20 周年記念を行ったことを思い出している。当時も、修士号授与の可能性、教科書(レクチャーノート)の充実、名誉研究員制度などを検討したことがあった。現在では、IISEE のホームページも充実し、レクチャーノートも無料(一部登録制)でダウンロードできるようになり、30 年前の課題がかなり解決されている。今後も更に研修が充実され、世界中の地震津波災害の軽減に寄与できるIISEE になって欲しいと期待している。
* いしやまゆうじ 北海道大学名誉教授
(社団法人)建築研究振興協会発行「建築の研究」2012.8掲載