ちょっと真面目チョット皮肉 184
石山祐二*
時間を表すには「秒、分、時、日、月、年」などを用いるが、基本となるのは「日」と「年」であろう。昼夜が生じるのは地球がコマのように回転(自転)しているからで(図 1)、その回転の 1 周に要する時間(周期)が 1 日である。
1 年とは太陽の回りを大きくまわっている地球の回転(公転)の周期である。この公転をしている軌道(黄道(こうどう))面に対する垂直な軸から地球の自転軸(地軸)は 23.4度ほど傾いて(より正確には 22.1~ 24.5 度を周期 4 万年で変動して)いて、このため地球上では(北極・南極の近くを除き)四季が生じる。もし、地軸が傾いていないとすると地球上のどこでも昼は 12 時間、夜は 12 時間となり、季節の変化はなく( 1 年中同じ季節)、公転による 1 周( 1 年)という概念は不要となっていたに違いない。
地軸が傾いて公転していることによって生じる春夏秋冬は人類にとって非常に重要で、いつ種子を植え、いつ収穫するかなど生活に直接関係している。ある年の春から翌年の春になると 1 年経過したことは大体分かるが正確には分かり難い。そこで、より正確に時間(年)の経過を知るために太陽・月・星の動きなどを観察し、暦ができ、占星術・天文学が発達した。
月の満ち欠けの周期( 29.53 日)を「月」とする太陰暦では、12 カ月を 1 年とすると季節が少しずつずれるため閏月(うるうづき)を設ける(数年ごとに 1 年を 13 カ月とする)暦もあった。現在の太陽の動きを基本とする太陽暦の起源は古代エジプトにある。公転の周期は 365.2422 日なので、1 年を 365 日とすると 4 年で約 1 日のずれが生じる。このため、(西暦による年が 4 で割り切れる)4年ごとに閏年を設け(これが「ユリウス暦」)、それでもずれが生じるので、100 で割り切れるが 400 で割り切れない年は平年とすることにした( 2000 年は閏年だったが、2100 年は平年となる)。これが 1582 年に当時のローマ教皇グレゴリウス 13 世が定めた「グレゴリオ暦」である。これでも 3,000 年で 1 日のずれが生じるが、その補正方法は決まっていない。
さて、「 46 億年前に地球が誕生した」などと非常に長い時間を表すのに「年」を用いる場合が多い。「世紀」を単位としても、しょせん「年」が基本であるが、実は「年」より長い時間を表す単位として「大年(おおとし)」(greatyear)がある。地球は歳差(さいさ)運動(図 1)をしていて、その周期が約 25,800 年でこれが「大年」である。歳差運動とは(地球が自転しながら)地軸がゆっくりと回転する(コマの首振りのような)現象である。これによって、今の北極星(「こぐま座」のポラリス)はいずれ他の星(例えば西暦 13,500 年頃には紀元前 12,000 年頃の北極星であった「こと座」のベガ)になる。
歳差運動はギリシアの天文学者ヒッパルコスが紀元前 2 世紀に発見したといわれている。しかし、紀元前 2,500 年頃の建設といわれているエジプト・ギザのスフィンクスやピラミッド(図 2)は紀元前 1 万年より 旧く、その時には歳差運動がすでに分かっていたとの説があり、いずれ紹介したいと思っている。
* いしやまゆうじ北海道大学名誉教授
(一社)建築研究振興協会発行「建築の研究」2020.7 原稿