ちょっと真面目チョット皮肉169
石山祐二*
マリモで有名な阿寒湖(あかんこ)の近くに周囲約 4km の小さなオンネトー湖がある。阿寒国立公園の一部である「オンネトー湖」と支笏湖(しこつこ)近くの「オコタンペ湖」と然別湖(しかりべつこ)近くの「東雲湖(しののめこ)」は北海道三大秘湖といわれている(図 1)。オンネトー湖は(見る場所によって変化するが)濃い藍色で、季節・天候・時間帯によっても種々変化するので五色湖とも呼ばれている。
この湖は雌阿寒岳(めあかんだけ)の噴火によってできた堰止湖(せきとめこ)で、ここから流れ出るのが螺湾川(らわんがわ)である。湖の水面高度は 620m、最大水深は 9.8m、酸性が強く魚類は生息していない。秘湖といわれるだけあって、湖畔に土産店もなく(トップシーズンを除いて)観光客もあまり多くはないが、茶屋、キャンプ場、駐車場、散策路、登山路、湯の滝もあり、誰が訪れても楽しむことができる場所である。
オンネトーとはアイヌ語で「年老いた沼」を意味する。北海道の地名はアイヌ語に漢字を当てはめたものが多いが、カタカナ表示も趣がある。なお、似たような名前の温根湯(おんねゆ)温泉(「おんね」とはアイヌ語で「大きな湯の湧くところ」)があるが、これはオンネトー湖とはまったく別の場所で北見市にある。
足寄町(あしょろちょう)にあるオンネトー湖畔の後方およそ 2km に雌阿寒岳(1499m)と阿寒富士(1476m)がある(写真 1)。なお、雄阿寒岳(おあかんだけ)(1371m)は阿寒湖畔の東側にあり約 20km 離れている。
オンネトー湖畔から雌阿寒岳と阿寒富士はほぼ同じ高さにみえるが、雌阿寒岳の方が 23m 高い。しかし、稜線の形状から推察すると雌阿寒岳の方が手前にあるように見えるのに、阿寒富士の方が少し高いように感じるのである(写真 1)。
台形状に見える山よりも三角形状に見える山の方が(同じ高さでも)高いと感じるのか、山頂と湖畔の距離は阿寒富士の方が少し近いのかなどと思いを巡らしている。正確な位置関係は道路地図では分かりそうもないので、もう少し大きな(縮尺の小さな)地図で確かめなければならないと思っている。
オンネトー湖へは(積雪期を除いて)車で行くことができるので、数回訪れたことがある。訪れる度に湖の色は異なり、周囲の緑も変化し、紅葉も美しく(写真 2)、五色湖と呼ばれることに納得している。次に訪れる際には山が高い低いなどという無粋(ぶすい)な疑問を自分なりに解消し、美しい景色をゆっくりと観賞したいと思っている。
*いしやまゆうじ 北海道大学名誉教授
(一社)建築研究振興協会発行「建築の研究」2016.12 原稿