ちょっと真面目チョット皮肉 145
石山祐二 *
世界地震工学会議は 4 年ごとに開催されており、2012 年 9 月の第 15 回開催地はポルトガルの首都リスボンで行われた。ポルトガルには地震は起こらないと思っている人も多いかも知れないが、1755 年にリスボン大地震が起きている。約 1 週間の会議には、3 千名を超える研究者や技術者が参加し、研究論文の発表や講演会などが行われた。会議に参加し、前後にリスボン市内や郊外を訪れ、その際に感じたことの一端を紹介したい。
ポルトガルは 15 世紀から始まった大航海時代の先駆者で、日本にキリスト教や西洋の文化を最初に伝えた国である。ポルトガルの全人口は 1000 万強、リスボン市は 50 万程度であるが、近隣の都市を加ると 200 万を超える都市である。リスボンには旧い建物が多く残されており(写真 1)、近代的な建物も多いが、旧い建物の外観をのみを残し改築された建物も多い。街を歩いてすぐに気が付くのが石畳で、公園や歩道の他に車道も石畳で舗装されている部分がある。石畳には 10cm 角位の白い石が主に用いられているが、黒い石で模様や文字を形取っている部分もある(写真 2)。
2 週間の滞在中に 1 日は傘が必要なくらいの雨が降ったが、その他は日本ではめったに見られないような、どこまでも透き通った青空であった。リスボンの街並みは、趣のある建物を左右に見ながら、単に散歩していても楽しい。食事も美味しく、ビールやワインも安価、治安もよく、これらの点では文句の付けようがない。
しかし、残念なことに煙草のポイ捨てが多いのである。いたるところで石畳の石と石の間に吸い殻が挟まっており(写真 3)、歩道の植え込みも灰皿のように用いられてた(写真 4)。その上、犬を散歩させる人も多く、犬の落とし物も多いのである。もっとも、観光客の多い旧市街地は比較的きれいに清掃されているので、多くの観光客はこのようなことに遭遇しないかも知れない。
しかし、道路の清掃を公的に行うのも重要であろうが、個人が自ら煙草のポイ捨てを止め、犬の飼い主は落とし物の始末をするならば、(リスボンに限ったことではないが)さらによい街になるのは間違いない。もっとも、慣れとは恐ろしいもので、滞在中に次第に吸い殻も気にならなくなり、歩道の落とし物を自然と避けて歩くようになったが、近いうちに清潔でさらに美しい街となることを期待しながら帰国した。
* いしやまゆうじ 北海道大学名誉教授
(社団法人)建築研究振興協会発行「建築の研究」2012.12 原稿