ちょっと真面目チョット皮肉 No. 195
石山祐二*
長さなどの単位が同じでなければ貿易の際などに不便である。1791(寛政 3)年フランスは 1 メートル(m)を北極から赤道までの距離(子午線の長さ)の 1000 万分の 1 として決議した(よって地球の円周は 4 万 km)。これを基に造られた白金とイリジウムの合金のメートル原器(の 1 本)を 1889(明治 21)年に国際度量衡総会は正式な原器として認定した。1960 年には、より正確に表すため物理現象(クリンプトン 86 元素が発する橙色の光の真空中の波長)を用いて定義され、1983 年からは光が真空中を 1 秒間に進む距離を 299 792 458m(約 30 万 km)として定義されている。
日本では 1885(明治 18)年にメートル条約に加入したが、実際に用いられていたのは尺であった。1951(昭和 26)年に計量法によって「尺貫法」の使用を法的に禁止したが、メートル法の完全実施は 1966(昭和 41)からである。1960 年からは国際(SI)単位系が(米国、リベリア、ミャンマーを除き)世界的に用いられているが、m の定義には変わりがない。
建築では長さの単位に m, mm(時には cm)が用いられているが、尺貫法の 1 尺(10/33m=303mm) の 3 倍(909mm)や 6 倍(1818mm = 1間(けん))が基本的な単位(モデュール)として用いられることがある。例えば、合板や石膏ボードの大きさは 3×6(さぶろく)といった呼称が用いられることがあり、これは横と縦の長さを尺で表したものである。1 間×1 間の面積 3.3m2 が 1 坪で、現在でも土地の単価を示す際に用いられることがある。部屋の大きさを、例えば 6 畳(じょう)などと畳(たたみ)(地域によって異なるが 3 尺×6 尺が基本で、より小さな団地サイズもある)の枚数に換算して示すこともある。
米国では今でも「ヤードポンド法」を日常的に用い、1 ヤード(0.9144m)は3フィート、1フィート(304.8mm)は 12 インチ、1 インチは 25.4mm である。合板や石膏ボードの大きさは 4×8(フィート)が標準で、フィートと尺はほぼ等しいのでこれ日本の 4×8(しはち、よんぱち)と実質的に同じ大きさである。
北米の枠組壁(わくぐみかべ)工法( 2×4(ツーバイフォー) 工法)の縦枠(間柱)の標準間隔は 16 インチ(40cm)である。この工法を日本に導入した際、縦枠間隔が 40cm では日本では使い難く、3 尺の 1/2(45cm)になることを想定し、「縦枠間隔は 50cm 以下とする」と告示で決めた経緯がある。今では縦枠間隔 45cm が普通で、枠組壁工法が日本に定着している。
コンクリートブロック(CB)造も北米からの導入であるが、CB の大きさは(目地幅 1cm を含み)長さ 40× 高さ 20×厚さ 15cm(他の厚さもある)が基本で、これは 16×8×6 インチである。縦横に鉄筋が入っている補強 CB 造は地震・津波・台風・火災に対しても強い構造であるが、最近はあまり用いられていない。この原因の 1 つに CB の大きさが日本の基準寸法(モデュール)と一致していないことがある。今からでも、日本のモデュールに一致しやすい 45×15×15cm の CB(図 1)を用いるのがよいであろう。この CB は芋目地も破れ目地にも容易に対応でき、個々の CB は少し軽くなり作業性が向上する。また、縦横の比が 1:3 となるので(個人的な好みにもよるが)見た目に安定感がある(図 2)。第二次世界大戦後に CB を導入した際に、このようなことを考慮すべきであったと思っている。
* いしやまゆうじ北海道大学名誉教授
(一社)建築研究振興協会発行「建築の研究」2023.4 原稿