ちょっと真面目チョット皮肉 No. 194
石山祐二*
コロナ禍が続く中、海外も国内旅行も自粛・禁止に近い状態が2020 年2 月頃から2 年以上も続いた。2022年 8 月に久しぶりの海外旅行(出張)でフィリピンに行くことになり、過去50 年間の百数十回の海外旅行を思い出すと色々と変わったことに気が付いた。
最大の変化は機内禁煙であろう。国外・国内にかかわらず飛行機に乗ると、離陸直前と直後は禁煙であったが、離陸して間もなく(数十秒であったように思えるが)チャイムと共に「禁煙」のサインが消え、すぐに煙草を吸う人がいた。エコノミークラスの狭い座席でも一人一人の肘掛けに小さな吸い殻入れがあったことを(若者を除いて)思い出すであろう。禁煙を始めていた私は、喫煙者のためのみにこのようなものを付けるのは「けしからん」と感じたが、税収を確保すためには仕方がないのかとも思っていた。
さて、今回の海外旅行で特に感じたのは新型コロナに関してである。フィリピンに入国する際にはワクチン接種履歴などを前もって登録する One Health Pass という手続きが必要であり、搭乗直前までパソコンに向かい窓口の女性の助けもあり、ようやく手続きを終えた。その結果の QR コードの画像をスマホで写し、それを入国時に示すことでスムーズに入国することができた。
フィリピンでの仕事は比較的順調に進み、帰国の準備を始めた。帰国の際には、72 時間以内に受けた PCR検査の陰性証明が必要で、帰国予定の 3 日前に検査を受けた。症状などはなかったが、翌日インターネットで受けた結果は陽性(図 1)であった。その後すぐに市からの指示で、ホテルの隔離階の部屋に移り 7 日間過ごし、この間は部屋から出ることが禁じられた。隔離期間後に再検査を受け、再度陽性となるとまたホテルに閉じ込められるのではと心配したが、幸い陰性(図 2)で、8日間遅れで帰国することができた。この中の PCR 検査は鼻と口(喉)から綿棒で検体を採取するため、検査所に行く必要があるが、その他はインターネットで行う。このため、パソコンまたはスマホが必須であり、両方ある方がよい。
フィリピンは東南アジアの中では最も英語が通じる国で、書類などは英語なので理解できる。もっとも、医療関連用語は普段用いることが少ないが、ある程度は知っておくのがよい。検査結果の陽性と陰性はpositiveとnegative である。検査を行ったのは市の Pathology(病理学)部である。日本でいう新型コロナは COVID-19(Coronavirus disease 2019 の略)である。PCR は(覚える必要はないかも知れないが)ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction)の略で、微量な検体からウイルスなどを検出する。入国手続きの際に、税関(custom)と検疫(quarantine)があることは知っていたが、quarantine には隔離の意味も(実はこれが第一の意味)であることを今回初めて知り、かつホテルの隔離で体験した。
最後に、最初の検査は陽性であったが、症状もなく体温・味覚・酸素濃度も正常であったので、これは(検査誤差の可能性も考えられるが)2021 年 6 月から 2022年 7 月までの間に受けたワクチン 4 回のお陰と思っている。
* いしやまゆうじ北海道大学名誉教授
(一社)建築研究振興協会発行「建築の研究」2023.1 原稿