ちょっと真面目チョット皮肉155
石山祐二 *
ビルやマンションの室内で天井を見上げると、柱・梁はり が突き出ていること(写真 1 )に気が付くことがある。そして、柱や梁が見えない方が、デザイン的にはすっきりすると思う人も多いであろう。しかし、柱や梁は構造的に重要で簡単に取り除くことはできない。
このような建物の断面は図 1(左)のようになっていて、柱と梁で構成されるこの構造をラーメン(構造)という。図の点線は天井を示しており、天井裏には設備の配管や配線が入っている。梁には、この配管や配線を通すため、貫通孔と呼ばれる孔がある。天井を梁の下に設けると、梁を隠すことができるが、 天井高てんじょうだかhcが低くなり、室内空間が小さくなって圧迫感を感じる人が増えるであろう。
このようなことを考えると、図 1(右)のように梁のない構造ならば、天井高も高くでき、天井裏の空間は連続しているので、(貫通孔を設けなくとも)配管や配線を通すことができることに気が付くであろう。事実、梁のない構造があり、フラットスラブ構造あるいは 無梁版むりょうばん構造と呼ばれる。しかし、地震時に柱に取り付く部分の床スラブが損傷して、床スラブが落下する危険性もあり、日本ではあまり用いられていない。
一方、フラットスラブ構造は建物内の空間の有効利用・施工期間の短縮・工事費の削減などが可能となるので、海外では地震の起こる国々でもよく用いられている。写真 2 は米国シアトルの建設中の建物で、写真 3 から分かるように梁のないフラットスラブ構造である。
さて、最近のマンションの床スラブの厚さは、(梁・小梁がある場合)構造的には 12~15cm でよいが、上階からの足音やその他の生活に伴う騒音を遮断するため 20 cm程度と厚くしている場合が多い。これを発展させ、騒音防止のみではなく、梁の代わりになるように床スラブを厚くし、耐震的に有効な補強をするならば、耐震的なフラットスラブ構造が可能となる。日本でも、耐震性に問題の少ない工法が開発され、徐々に用いられるようになってきているが、今後さらに改良されるのであれば、この構造がもっと広範に用いられるに違いないと思っている。
* いしやまゆうじ 北海道大学名誉教授
(社団法人)建築研究振興協会発行「建築の研究」2014.8 掲載