ちょっと真面目チョット皮肉 No. 191
石山祐二*
コロナ禍のため外国旅行ができなくなったが、海外に行った話の中で美味しかった食べ物について問われることがある。味覚に自信のない私ではあるが、ペルーの「セビーチェ」(Cebiche、セビッチェとも表示されるが、ビーと伸ばす方がに現地の発音に近い)を第一に推したい。セビーチェは新鮮な魚介類と野菜をレモン汁と香辛料で和えたもので、日本人の味覚にも合う(中南米の他の国にもセビーチェはあるが、ペルーのセビーチェは絶品である)。
次は「ギリシャ・サラダ」である(写真 1 参照)。新鮮な野菜サラダにフェタチーズとオリーブの実を添えてドレッシングとしてオリーブ油をかけたものである。フェタチーズは山羊の乳から作った白色のチーズで塩味があるので、オリーブ油をかけただけで実に美味しい。ビールやワインとの組合せも抜群で、ギリシャに行った際には何度も注文した。ギリシャでは単にサラダと注文するのみでよいが、他の国ではギリシャ・サラダ(Greek salad)と注文するとよい。
さて、最近は新型コロナウイルスの変異株でギリシャ文字が身近になっているようであるが、学術分野では特別な係数・記号などを表すのにギリシャ文字が用いられることが多い。円周率のπ(パイ)、総和を表すΣ(シグマ)などは誰でも知っているであろう。
ギリシャでは当然ではあるがギリシャ文字が用いられている。もっとも、地名などはローマ字も併記されているので、ギリシャ文字を知らなくとも旅行には差し支えがない。ギリシャ文字には表 1 に示すように対応するローマ字がある。これを用いギリシャ文字をローマ字に変換する(例えば π は p に、Σは S に変換する)と、ギリシャ文字を読むことができるようになる。
写真 1 の左の瓶のラベルの「A ΛΦ A」を変換すると「ALPHA(アルファ)」となる(小さな字でアルファ・ビールと英語でも書いてある)。ギリシャで泊まったホテルの扉に「Π I Σ I ΝΑ」と書いてあったので、「PISINA」に変換される。何を表しているのか戸惑ったが、スペイン語の「PISCINA」を思い出し、それがプールへの入口であることが分かった際には、ペルー滞在中にスペイン語を少し学んだことが役だったように感じた。
表 1 ギリシャ文字と対応するローマ字
順番 | 名称* | G | R | 順番 | 名称* | G | R |
1) | アルファ | A α | a | 13) | ニュー | N ν | n |
2) | ベータ | B β | b | 14) | グザイ | Ξ ξ | x |
3) | ガンマ | Γ γ | g | 15) | オミクロン | O o | o |
4) | デルタ | ∆ δ | d | 16) | パイ | Π π | p |
5) | イプシロン | E ϵ | e | 17) | ロー | R ρ | r |
6) | ツェータ | Z ζ | z | 18) | シグマ | Σ σ | s |
7) | イータ | H η | ē | 19) | タウ | T τ | t |
8) | シータ | Θ θ | th | 20) | ウプシロン | Υ υ | u |
9) | イオタ | I ι | i | 21) | ファイ | Φ ϕ | ph |
10) | カッパ | K κ | k | 22) | カイ | X χ | ch |
11) | ラムダ | Λ λ | l | 23) | プサイ | Ψ ψ | ps |
12) | ミュー | M µ | m | 24) | オメガ | Ω ω | ō |
*日本語の慣用表現(他の表現もある)G:ギリシャ語の大文字と小文字、R:対応するローマ小文字
最後に、新型コロナウイルスはデルタ株からオミクロン株に移行したようであるが、変異株には(発生した国や地域ではなく)ギリシャ文字の順番に名前が付けられている。最初の 2 文字はアルファとベータ(これが「アルファベット」の語源)で、デルタは 4 番目、オミクロンは 15 番目である(13, 14 番目は何かを連想させるようで用いられていない)。いずれにしても最後のオメガ以降は、どうなるのであろう。最初のアルファに戻り数字を加え、α2(アルファ・ツー)となるのではと推測しているが、その前にコロナ禍が終息して欲しいと願っている。
*いしやまゆうじ 北海道大学名誉教授
(一社)建築研究振興協会発行「建築の研究」2022.4 原稿