2015年2月26日

No.158 三つの人魚像

ちょっと真面目チョット皮肉 158

石山祐二 *

2014>年 12 月にデンマークの首都コペンハーゲンにある人魚像(写真 1 )と 20 年振りの再会をした(このことは 1984 年 8 月にこの連載の中で紹介した)。この像は、世界 3 大ガッカリ名所の一つと 揶揄(やゆ)されてはいるが、寒い時季にもかかわらず多くの観光客が訪れていた。この像は海岸の岩の上にあり、すぐ近くまで歩いて行くことができ、岩の上に登って一緒に写真を撮ることもできる。このため、ペンキで塗られたり、一部が切断されたりしたことも数多くあった。このような災難にあうのも、アンデルセンの童話「人魚姫」をモチーフとして 1913 年に公開されたこの像が名所であるからに違いない。

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写真 1 コペンハーゲンの人魚像

コペンハーゲンの像を見て、 JR 札幌駅西口の待合コーナーの人魚像(写真 2 )を思い出した。これはコペンハーゲンの 1/2 の複製で、台座には JR 北海道とデンマーク国鉄の姉妹提携記念として 1991 年に設置されたと書かれている。しかし、この像はあまり目立たないので、知っているのは札幌駅を通勤で利用している人々でもせいぜい半分程度のようである。

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写真 2 札幌の人魚像

さて、人魚像は他にもあり、ポーランドの首都ワルシャワにあるのが写真 3 である。第 2 次世界大戦で荒廃した旧市街地と周辺は「壁のひびに至るまで」忠実に復元され、ユネスコの世界遺産として登録されている。その広場にある像は、よく見ると腰から下が鱗で覆われていて、盾と剣を持った勇ましい姿をしている。人魚はワルシャワ市のシンボルで市の紋章ともなっている。この理由は、市の中央を流れているヴィスワ川のほとりに住んでいた漁師ワルス(妻の名はサワ)が網にかかった人魚を助けたという伝説に由来していて、漁師の名前がワルシャワという名の起源である。

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写真 3  ワルシャワの人魚像

* いしやまゆうじ 北海道大学名誉教授
(社団法人)建築研究振興協会発行「建築の研究」 2015.2 掲載

連載「ちょっと真面目チョット皮肉」(北海道大学名誉教授 石山 祐二) No.134 花嫁人形と蕗谷虹児 No.135 清潔で安全なシンガポール No.136 広瀬隆著「東京に原発を!」を読み直して No.137 最近の建物の耐震設計に対する懸念 No.138 日本最北のヴォーリズ建築「ピアソン記念館」 No.128 「赤れんが庁舎」を美しく後世に残そう! No.139 建築と食卓の「bと d」 No.140  津波対策にも New Elm工法! No.142  津波に対する構造方法等を定めた国交省告示 No.141 建物の基礎と杭の接合は過剰設計! No.143 国際地震工学研修50 周年 No.144 ペルー国立工科大学・地震防災センター創立 25 周年 No.27 着氷現象と構造物への影響 No.145 リスボンは石畳の美しい街、しかし・・・ No.146 トンネル天井落下事故の原因 No.147 積雪による大スパン構造物崩壊の原因と対策 No.148 生誕100 年彫刻家佐藤忠良展 No.149 地震工学に用いる各種スペクトル (その1)  :応答スペクトル No.150 地震工学に用いる各種スペクトル(その 2) :  トリパータイト応答スペクトルと擬似応答スペクトル No.151 地震工学に用いる各種スペクトル(その 3)  :要求スペクトルと耐力スペクトル No.152 地震工学に用いる各種スペクトル(その 4): 要求スペクトルと耐力スペクトル No.153 中谷宇吉郎著「科学の方法」:氷の結晶のV字型変形 No.154 新渡戸稲造と武士道 No.155 これからのフラットスラブ構造 No.156 塩狩峠記念館 三浦綾子旧宅 No.157 ニッカウヰスキー余市蒸留所 No.158 三つの人魚像 No.159 ラオスと建築基準 No.160 北海道博物館2015 年4 月開館 No.161  30年振りのプリンス・エドワード島 No.162 道路標識と交通信号機 No.163 童謡「赤い靴」の女の子 No.164 地すべりと雪の上の足跡 No.165 建築物のダイヤフラム、コード、コレクターと構造健全性 No.166 地震による 1 階の崩壊と剛性率・形状係数  No.167  北海道新幹線と青函トンネル No.168 米国の建築基準と耐震規定の特徴 No.169 北海道三大秘湖の一つ「オンネトー湖」は五色湖 No.170 世界遺産シドニー・オペラハウス No.171 シドニー・オペラハウスの構造 No.172 北海道の名称と地名 No.173 鳩を飼わない「ハト小屋」 No.174 ロンドン高層住宅の火災の原因は改修工事!? No.175 断熱性能を示す Q 値、U A 値とその単位 No.176 幻の橋タウシュベツ川橋梁 No.177 広瀬隆著「原発時限爆弾」を読んで! No.178 2018 年北海道胆振東部地震とその被害 No.179 地震にも津波にも強いブロック造の現状と将来 No.180  ISO の地震荷重と日本・EU・米国との比較 No.181  日本・ペルー地震防災センターの国際シンポジウムに参加して No.182  フィリピンは破れ・日本は芋?! No.183  ブレーメンの音楽隊とサッカー No.184 時間の単位は「秒,分,時,日,月,年」,その次は? No.185  サッカーボールの形と構造の変化 No.186  円周率を最初に計算したのは? No.187  JIS A 3306 となった ISO 3010「構造物への地震作用」 No.188  建物の整形・不整形を表す剛性率 No.189 水道水が美味しいのはどこ? No.190 設計用地震力の分布を表す Ai の導き方 No.191 美味しかった食べ物とギリシャ文字 No.192 構造物のロバスト性 No.193 ラーメンvsトラスと2つの鉄塔 No.194 久しぶりの海外でコロナ感染! No.195 長さの単位と建築のモデュール No.196 関東大震災100年「大地震とその後の対策」 No. 197 北海道の「挽歌」と「石狩挽歌」 No.198 トルコ共和国建国100年と地震被害 No. 199 耐震性を向上させる強度と靱性、どちらも重要であるが・・・ No. 200 最終回の御礼 各種ダウンロード リンク
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