ちょっと真面目チョット皮肉 158
石山祐二 *
2014>年 12 月にデンマークの首都コペンハーゲンにある人魚像(写真 1 )と 20 年振りの再会をした(このことは 1984 年 8 月にこの連載の中で紹介した)。この像は、世界 3 大ガッカリ名所の一つと 揶揄(やゆ)されてはいるが、寒い時季にもかかわらず多くの観光客が訪れていた。この像は海岸の岩の上にあり、すぐ近くまで歩いて行くことができ、岩の上に登って一緒に写真を撮ることもできる。このため、ペンキで塗られたり、一部が切断されたりしたことも数多くあった。このような災難にあうのも、アンデルセンの童話「人魚姫」をモチーフとして 1913 年に公開されたこの像が名所であるからに違いない。
コペンハーゲンの像を見て、 JR 札幌駅西口の待合コーナーの人魚像(写真 2 )を思い出した。これはコペンハーゲンの 1/2 の複製で、台座には JR 北海道とデンマーク国鉄の姉妹提携記念として 1991 年に設置されたと書かれている。しかし、この像はあまり目立たないので、知っているのは札幌駅を通勤で利用している人々でもせいぜい半分程度のようである。
さて、人魚像は他にもあり、ポーランドの首都ワルシャワにあるのが写真 3 である。第 2 次世界大戦で荒廃した旧市街地と周辺は「壁のひびに至るまで」忠実に復元され、ユネスコの世界遺産として登録されている。その広場にある像は、よく見ると腰から下が鱗で覆われていて、盾と剣を持った勇ましい姿をしている。人魚はワルシャワ市のシンボルで市の紋章ともなっている。この理由は、市の中央を流れているヴィスワ川のほとりに住んでいた漁師ワルス(妻の名はサワ)が網にかかった人魚を助けたという伝説に由来していて、漁師の名前がワルシャワという名の起源である。
* いしやまゆうじ 北海道大学名誉教授
(社団法人)建築研究振興協会発行「建築の研究」 2015.2 掲載