
3-5 貯蔵と加工のある 1.5次産業の育成と建築技術
1次産業にとっての最大の難題は、生産物をどう販売するかにあります。
常に必要十分な生産量を確保することが求められる一方で、零細企業の典型である生産者は、時にはお役所、商社、流通業者、加工業者、さらに消費者という王様の圧力で、半ば強制的に販売ルートや価格が決められてきました。
生産には季節性があって休日もない繁忙期がある一方、出稼ぎや季節労働に出向かざるをえない閑散期もあります。こうした1次産業の特性である閑散期を生かして、貯蔵から加工へと取り組みの巾を広げることができると、自分で価格をつけることのできる独自の生産物が生まれます。
1次産業の特徴は、農業にしろ水産業にしろ、自然エネルギー利用という自給自足の基盤を持っていることで、何が何でも所得を増さねばならない2次、3次産業とは異なり、支出を減らす経済が有効であることです。
生産物の貯蔵、乾燥、加工にはもちろん相応の道具や装置、器としての建築が必要ですが、その始まりもまた、生産物の一部を自家用として、建物の片隅や手作りの空間を活用して加工する自給自足からです。
都会にはない広い土地と清純な自然エネルギーと、貯蔵や乾燥への取り組みや工夫があり、製品を譲ってほしいと言う人が現れれば 1.5次産業の始まりです。