2-9 新鮮な外気を生かす器
吸湿した湿気を外に逃がす必要から生まれた日本の伝統建築には、床下、間仕切壁、屋根裏などのいたるところに通気経路があり、冬の隙間風には悩まされながらも換気不足の心配とは無縁でした。
北海道から始まった冬の環境改善への取り組みが、気密化から始まったのは自然の成り行きでしたが、特に窓の気密化が先行して結露被害が続発し、部屋ごとの強制換気が義務付けされるようになってしまったのは行き過ぎでした。
気密化とは外の冷たい空気が室内入ることを防ぐことではなく、室内の湿った空気が断熱された壁の中に漏れるのを防ぐためのものですから、本来換気や避難口の役割を持つ窓の気密化は、それほど必要ではなかったのかもしれません。
取り入れ空気の寒さを和らげ、湿気を含んだ空気を安全に排除するという点では、床下、土間、付設温室などの緩衝空間に外気を取り入れ、開放された室内に取り入れた後、断熱された排気塔で排除するのが最も賢明で確実な換気法です。
たとえば付設温室に日射があれば、少なくともその時間帯には窓や扉を開放して十分な換気が出来ますし、床下に排熱回収や補助ヒーターがあれば寒さを忘れる換気が出来ます。屋根裏も高温になりやすい場所で、予熱利用が可能な緩衝空間ですが、室内への外気取り入れに自然対流が使えないのが難点です。