2-8 湿度調整の器としての建築
本州には今でも“冬に結露は付きもの”といって、寝室や窓面、押し入れや床下などの結露を当然とする建築関係者がいます。
夏の梅雨時ならいざ知らず、冬の外気は巨大な除湿機です。-10℃ 100%の外気を 0℃に加熱するとその相対湿度は 47%、10℃で 23%、20℃では12%の乾燥空気になります。逆に 20℃ 50%の居間や食堂の空気が冷やされて 9.4℃以下になると、相対湿度は100パーセントを超えて結露が始まります。
もし気密化された建物内に寒い部屋があると結露が防げなくなりますし、建物全体が暖房されるとカラカラに乾燥して、加湿とそのための熱が必要になります。
冬の結露を防ぐには、床下も含めて全空間を 10℃以上に保つ断熱と全室暖房の工夫と共に、むしろ、洗濯、入浴、植栽や床下地盤などから発生する水蒸気をできるだけ室内に導いて有効に活用し、異常乾燥を防ぐことが大切になります。
冬の結露に比べると夏の結露防止や除湿は、はるかに面倒です。
梅雨のように、数日にわたって相対湿度が 90パーセントを超え、気温の変動も少ない飽和状態での結露防止は大変困難で、わら、木、紙、土、布など、吸湿性に富む材料を多用して湿気を吸収し、吸湿後の放湿、乾燥を促す通気を大切にしてきたのが日本建築の伝統です。