2-3 自然エネルギーの個性を尊重するための器
自然エネルギーにはそれぞれ、他のエネルギーにはない個性があります。
窓から入射する太陽エネルギーには、光として室内に明るさと活気を与えるだけではなく、戸外からの様々な情報と共に、移り変わる風景の彩りや時の経過を知らせ、植物を育て、花を咲かせ、健康を維持し、最後には熱として室温を保つなどの個性豊かな働きがあります。
天空光や反射光、そよ風や熱対流、気温の日変動や年変動、乾燥や湿潤、蓄熱や放熱、新鮮な空気や水、微妙な風圧や気圧の変動などは、一般には自然エネルギー利用の対象とは考えられていません。しかし、こうした低密度、低落差でしかも変動性、地域性の大きな自然エネルギーの性質をそのまま活用し、化石エネルギーや電力ではなしえない働きを引き出すことができるのが建築という器です。
朝日や夕日や雲に照らし出される室内の彩りや陰影、心地良さとともに空気の揺らぎを生み出す風圧変動、自然換気の原動力となる熱対流、夜間換気や床下地盤の冷却力など、断熱や熱容量を生かして大きな気温変動を暖房あるいは冷房の熱源に変換するのも建築の役割です。
装置やパネルで熱や電力に変換する自然エネルギー“利用”に対して、建物によってそのエネルギーの特性を生かす取り組みは自然エネルギーの“活用”です。