
2-6 昼の光を生かす器としての建築
一日の始まりを告げる朝日が部屋の奥にまで差し込み、天空光を含む強い光が室内に活気を与え、紅く彩られた夕日が室内を染め、縁側に出て夜空に輝く月や星を眺め、揺らぐ炎や小さな灯りで夜の空間を演出し、暗さのなかに作られる明るさを楽しむのが、光をめぐる一日の生活でした。
暗く照度の低い所では色温度の低い暖色系の光源、明るく照度の高い場所では天空光のような色温度の高い清明な光に包まれるのが自然で、私達はそうした自然環境に親しみ、慣れてきました。
人工光源の出現で地下空間や大規模建築が可能になり、天空光に近い白色光で部屋全体を明るくする昼型の照明が普及しましたが、多様な変化と、情報を伝える自然光への渇望は強く、むしろ大規模建築ほど、窓からの採光や展望を重視しながら人工照明を用いる併用方式が主流になっています。
省エネルギー上の配慮から晴天時には消灯することが求められる補助照明ですが、消し忘れで効果が現れない事例も少なくありません。
むしろ補助光源の使用は特に暗い日や日没後の使用を想定して暖色系とし、晴天時に点燈すると違和感を覚え、黙っていても消灯したくなるような環境をつくるなど、昼の光と夜の光との使い分けにも工夫が欲しいものです。