2-11 自然エネルギーを後世に引き継ぐ器としての建築
かつて日本の住宅の寿命は30年といわれ、頻繁な取り壊しが環境破壊の元凶とされてきました。
しかし更新廃棄の速さという点では、工業製品や電子機器のほうがはるかに短命で、一年も持たずに廃棄されるハイテク機材が山ほどあります。
建築には様々な資源が消費されますが、日本の伝統的な建築の素材である木材や藁、たたみや紙などは明らかに自然エネルギーの結晶で、伝統民家の中にはこうした素材だけで 200年を超えて今なお使われているものが多くあります。
いま一般の住宅でも 100年あるいは 200年住宅を目標に長寿命化が模索されていますが、それを支える技術の一つが断熱です。
外断熱によって建物全体が保護されると、雨や湿気や気温変動の影響を受けずらくなり構造体の寿命が格段に延長されます。
世界遺産に登録されるような建築はさらに寿命の長いものですが、こうした住宅はもはや個人資産ではなくむしろ社会資産であって、どう住み替え、どう管理して皆で使い続けるかが問われます。
無償の富である自然エネルギーもまた個人資産ではなく、勝手に売ることも買うことも出来ない、もっと大きな“社会資産”であるという理解が必要です。