
2-2 むらのない環境をつくる器
断熱不足の建物で力ずくの暖冷房をすると、室温の上下差は15℃以上にもなります。健康で活動している人ならば適応できても、高齢者や体調不良の人で、頭部と足部、前部と背面など、体の部位によって温度むらがあると体調の維持が難しくなり、冷房病や風邪などで健康を損なってしまいます。
意外に思う人がいるかも知れませんが、戸外の自然は、変動は大きくても気温のむらはほとんどない環境です。運動量に応じた着衣があれば、全身で心地良さや爽やかさを享受することが出来るのが自然の素晴らしさ、爽やかさです。
この心地良さ、爽やかさを建物内でも可能にするのも断熱の役割です。
断熱によって外壁に入射する日射や低温外気の影響が除かれ、部屋の周壁温が室温に近づくと、必然的に室内の温度むらは小さくなります。
快適さを感じる温度範囲が広がるので、暑さを感じる人がいる一方で寒さを訴える人がいるという不都合が解消されますし、高齢者の体調管理が容易になって高血圧から開放されたという事例も珍しくありません。
高窓や室上部の開口によって室上部の熱気を排除し、半地下室や床下空間を活用して床付近の冷気を下に循環させて均一な温度環境を保つ工夫も、熱対流という自然の力の活用です。