1-4 氷という断熱材
天然の断熱材ともいえる雪と同じ固体でありながら、氷は逆に金属を除く物体では岩石と並んで最も熱を伝えやすい物質です。
冬山の遭難だけではなく、氷に包まれることは多くの動物にとって死を意味する危険な状態なのですが、ここにもまた、水中の動物を守る不思議な断熱材としての働きがあります。
水の比重は4℃が最大で、それよりも高温でも低温でも軽くなるという他の液体には見られない性質があります。
4℃以上では他の流体と同様に、温められると軽くなって上昇し、冷えると下降しますが、4℃以下では、温かい水は下降し、冷たい水は上昇するという逆の熱対流現象を起こします。
水の表面が4℃以下になると表層の水は下降せずに滞留して氷結を始め、氷の比重は水よりも軽いため、常に浮んだ状態でその厚さを増してゆきます。しかも氷結するときには1ton当たり 80,000kcal(約 93kWh )の凝固熱を発生して、湖や海が氷漬けになることを防いでいます。
岩石に匹敵する熱の良導体である氷が、断熱材として水中の生物を守っているというのも水の不思議な性質です。