2-5 自然エネルギーを環境調整の主役にする器
現代では、暖冷房や照明には化石エネルギーや電気を使うのが常識で、変動の大きな自然エネルギーはむしろ外乱と呼ばれて、一定の環境を保つことを妨げる邪魔ものとさえ見なされています。
しかし建物の熱損失が小さくなり、化石エネルギーへの依存が小さくなるにしたがって、窓からの目射や生活排熱など、一仕事を終えた自然エネルギーが冬の暖房エネルギーの半分以上を占める主熱源になります。暖房の主役交代で、筆者はこれを再利用熱暖房と呼んでいます。
冷房の場合には、窓からの日射や室内取得熱が断熱によって外に逃げずらくなりますから、冷房負荷は必ずしも小さくなるとは限らず、特に夜間や中間期の冷房負荷は大きくなってしまいます。
一般に冷房装置は昼に運転するのが常識ですが、相対的な熱容量が大きくなった断熱建物では、室内取得熱は構造体が吸収し、外壁からの熱流のピークは夜間にずれ込むので、建物の冷却は昼よりも夜間にするのが効果的なのは明らかです。
方位を無視した大開口を避け、室上部に集まる熱気を高窓などで排除し、夜間の冷気や床下地盤の低温など、寒地に溢れている夜の冷熱源を積極的に活用する工夫があれば、少なくとも北海道の住宅では電力依存の冷房は不要になるはずです。