2-1 自然に親しむための器
外断熱された地球という星のなかに生きる動物達はさらに、岩、土、雪、水、木、草のなかに巣をつくり、その断熱力に頼って気温変動を緩和しています。
人間にとっての住まいもまた、大きな変動を緩和して穏やかな環境をつくる断熱材として有史以前から使われてきました。
最近、地球にやさしい生活として、省エネルギー、温暖化防止、エコロジーなどへの取り組みが強調されていますが、“やさしさ”とは、暴力を控えめにするというような消極的なことではなく、もっと積極的に、地球や自然の中に満ちている素晴らしさを知り、親しみと喜びを発見する生活から生まれるはずです。
断熱から生まれる穏やかさには、自動制御でつくられる一定環境とは異なる緩やかな変動があり、変動そのものの大切さをも教えてくれます。
断熱によって化石エネルギーへの依存が減ると、窓からの日射や生活発熱を主役とする再利用熱暖房が可能になり、自然を敵視する意識も薄らぎますが、より自然に親しむには、欠点を補う技術対応よりも、良さを発見してそれをより顕著にする取り組みが大切です。雪や寒さに親しむことのできる着衣での散歩、雪の美しさを大切にする景観づくり、北海道の特質である夏の涼しさをより顕著にする冷房手法の普及など、その課題はたくさんあるはずです。