2015年7月19日

1-3 水に秘められた創造の知恵

水蒸気を含む空気の熱対流から生まれる雲
個体、液体、気体の3態が共存する変化に満ちた自然

1-3 水に秘められた創造の知恵

水は大変不思議な物体です。H20の分子量は 18 と他の分子に比べて軽量ですが、熱容量(比熱)や蒸発・凝縮の潜熱は際立って大きく、安定した環境をつくることに貢献しています。

身の回りに気体、液体、固体の3態が共存し、しかもそれぞれが多様な姿と役割を持って変化に満ちた環境をつくるのも、水だけに見られる特別なことです。

水蒸気としての水が大気の大循環を促し、清浄な環境を維持していることは既に書きましたが、液体としての水は生物自体の主要な構成物質として生命を宿し、活動を促す源となっています。

水なしには焼き尽くす炎のような太陽エネルギーが、水を得て緑を育て、花を咲かせ、枝を伸ばし、自然エネルギーの結晶とも言える実りをもたらします。

固体としての水は霧氷となり、あられや雹(ひょう)や雪となり、乾いた雪、湿った雪、軽い雪、重い雪、霜やツララや氷河として多彩で多様な姿を見せてくれますが、舞い降りる雪の結晶はどれ一つとして同じもののない美しい芸術品です。

地表を覆う雪は冬の寒さから動物達を守る天然の断熱材で、冬眠の熊だけではなく、多くの小鳥や小動物、微生物が雪の断熱力に頼って厳しい冬の寒さを乗り越えています。

「断熱から生まれる自然エネルギー利用」(北海道大学名誉教授 荒谷 登) Ⅰ 自然エネルギーって何だろう 1-1 地球という外断熱された星 1-2 外断熱された地球の特有のエネルギー 1-3 水に秘められた創造の知恵 1-4 氷という断熱材 1-5 目に見えない放射エネルギーと見えない断熱材 1-6 気温の年変動も自然エネルギー 1-7 地域性に富んだ自然エネルギー 1-8 変動から生まれ変化を促す自然エネルギー 1-9 自然エネルギーは全自動の環境保全エネルギー 1-10 温暖化の恐怖 1-11 自然エネルギー利用の難しさとやさしさ 1-12 地域の宝としての自然エネルギー Ⅱ 自然エネルギー活用の器としての建築 2-1 自然に親しむための器 2-2 むらのない環境をつくる器 2-3 自然エネルギーの個性を尊重するための器 2-4 変動から生まれる自然エネルギーを生かす器 2-5 自然エネルギーを環境調整の主役にする器 2-6 昼の光を生かす器としての建築 2-7 夜の光の演出 2-8 湿度調整の器としての建築 2-9 新鮮な外気を生かす器 2-10 無償の富を生かす器としての建築 2-11 自然エネルギーを後世に引き継ぐ器としての建築 Ⅲ 北海道の1次産業の活性化 3-1 典型的な自然エネルギー利用としての農・林・水産業 3-2 1次産業の環境整備に生かされなかった寒地建築技術の蓄積 3-3 ビニールハウスの熱環境 3-4 雪利用の貯蔵技術 3-5 貯蔵と加工のある 1.5次産業の育成と建築技術 3-6 天日干しの魅力 3-7 自動制御不要の氷温貯蔵 3-8 低温乾燥貯蔵の工夫 3-9 断熱材で建物を作る 3-10 規格外品も廃棄物さえもすぐれた自然エネルギーの結晶 3-11 過疎化と疎外を招く大規模化指向 3-12 森を生かすナショナルプロジェクト 3-13 薪利用の建築的な工夫 3-14 地産地消の共同体(コミュニティ) 3-15 北海道の課題としての1次産業の活性化 Ⅳ 持続可能な成長への期待 4-1 弱さを大切にする成長 4-2 持っている特質を生かす成長 4-3 共有の富を育てる成長 もくじ 各種ダウンロード リンク
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