2015年8月20日

3-2 1次産業の環境整備に生かされなかった寒地建築技術の蓄積

土間の代わりに普及した外よりも寒い?作業場
土間の代わりに普及した外よりも寒い?作業場

3-2 1次産業の環境整備に生かされなかった寒地建築技術の蓄積

土間は伝統民家の生活の中心でした。

蒸し暑い夏に一歩足を踏み入れるとスーッと汗が引く涼しさがあり、冬には陽射しを受けながら藁を打って縄や莚やわらじを編み、かまどがあって食事の準備や風呂を沸かし、気軽に農機具の修理や手入れまで出来ていた土間が、北海道の農家住宅から消えてしまったことにお気づきでしょうか。

大家族のそれぞれに役割があり、収穫物を加工し、生活の知恵を生かし、家族や隣人との情報交換をする気楽な交流の場でもありました。

もちろん、凍上で家が傾き、隙間風が吹き込む北海道の住宅に開放的な土間を引き継ぐのは耐え難いことで、縁側と共に見失われてしまったのも止むを得ないことですが、それに代わる作業場が波型鉄板一枚の鉄骨D型ハウスでは、作業や加工
の意欲だけではなく、自分で工夫をする生活の知恵さえも失われてしまいます。

相応の室温が保たれた作業空間の確保は、残念ながら生産効率を高める農業政策の補助金の対象にはならず、住生活の環境改善を求めた寒地住宅の知恵も、土間に象徴される1次産業の環境改善には生かされませんでした。

無償の自然エネルギーの有効活用は建築という器の役割ですが、その技術と知恵を1次産業の環境改善につなぐことを課題として考えてみたいと思います。

「断熱から生まれる自然エネルギー利用」(北海道大学名誉教授 荒谷 登) Ⅰ 自然エネルギーって何だろう 1-1 地球という外断熱された星 1-2 外断熱された地球の特有のエネルギー 1-3 水に秘められた創造の知恵 1-4 氷という断熱材 1-5 目に見えない放射エネルギーと見えない断熱材 1-6 気温の年変動も自然エネルギー 1-7 地域性に富んだ自然エネルギー 1-8 変動から生まれ変化を促す自然エネルギー 1-9 自然エネルギーは全自動の環境保全エネルギー 1-10 温暖化の恐怖 1-11 自然エネルギー利用の難しさとやさしさ 1-12 地域の宝としての自然エネルギー Ⅱ 自然エネルギー活用の器としての建築 2-1 自然に親しむための器 2-2 むらのない環境をつくる器 2-3 自然エネルギーの個性を尊重するための器 2-4 変動から生まれる自然エネルギーを生かす器 2-5 自然エネルギーを環境調整の主役にする器 2-6 昼の光を生かす器としての建築 2-7 夜の光の演出 2-8 湿度調整の器としての建築 2-9 新鮮な外気を生かす器 2-10 無償の富を生かす器としての建築 2-11 自然エネルギーを後世に引き継ぐ器としての建築 Ⅲ 北海道の1次産業の活性化 3-1 典型的な自然エネルギー利用としての農・林・水産業 3-2 1次産業の環境整備に生かされなかった寒地建築技術の蓄積 3-3 ビニールハウスの熱環境 3-4 雪利用の貯蔵技術 3-5 貯蔵と加工のある 1.5次産業の育成と建築技術 3-6 天日干しの魅力 3-7 自動制御不要の氷温貯蔵 3-8 低温乾燥貯蔵の工夫 3-9 断熱材で建物を作る 3-10 規格外品も廃棄物さえもすぐれた自然エネルギーの結晶 3-11 過疎化と疎外を招く大規模化指向 3-12 森を生かすナショナルプロジェクト 3-13 薪利用の建築的な工夫 3-14 地産地消の共同体(コミュニティ) 3-15 北海道の課題としての1次産業の活性化 Ⅳ 持続可能な成長への期待 4-1 弱さを大切にする成長 4-2 持っている特質を生かす成長 4-3 共有の富を育てる成長 もくじ リンク
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