研究会について

研究会の設立趣旨

 木造建築は森林資源を持つ世界各地で、その気候風土に根ざした建物として造られてきました。建築構造の区分としては木構造と呼ばれていましたが、現在は無垢の木材(製材)の他に集成材・合板など各種の木質材料も使用されることから、木質構造という呼び名が使われています。

木質構造は炭素ストック能を持つ再生産可能な生物材料を用いた、環境負荷の少ない構造物であることから、近年は各種の公共建築や民間の事務所・店舗建築など、住宅以外の用途でも増加が期待されています。しかし、木材を使うだけで環境負荷が低減される訳ではありません。環境調和性に優れた建物を建てるには、機能性、居住性、耐久性など、少ない環境負荷で快適に長く使い続けるための様々な要素に対する配慮が必要です。

このような背景から、平成26年度に常設研究会の一つとして、木質構造研究会が設置されました。この研究会では、木質構造の構造性能に重点を置きながら、北海道の木質構造の設計・施工技術の向上・普及に多面的に取り組んで行きたいと考えています。

北海道の木質構造

多雪寒冷地である北海道の建物には、一般地域とは異なる技術的課題があります。木質構造の場合は一般に自重が軽いため、積雪荷重とそれによる地震力の増大が構造計画に大きく影響します。また、断熱計画と構造計画を同時に考えなければならないことも寒冷地に特有の事情です。

北海道の戸建て木造住宅は現在約65%が在来構法、30%弱が枠組壁工法ですが、冬期の厳しい環境に対応してきた結果、基本的な構造形態を除いては両構法の違いが少ないことも特徴の一つとなっています。このことは、北海道ではこれらに共通の構造計画や技術開発が可能であることを示唆しています。また、1階または半地階を壁式RC造、上階を木造とした混構造住宅も多雪寒冷地に適した住宅構造であり、適切な構造設計法の普及が課題となっています。

住宅以外の木質構造は現在まだわずかですが、近年は国の施策による公共建築などが、混構造を含めて少しずつ増えつつあります。しかし,北海道内には多様な規模、構造形態の木質構造の構造設計を担当できる技術者がまだ少ないのが現状です。

以上のような現状から、多雪寒冷地である北海道に適した設計・施工技術の検討や実務設計資料の整備が望まれています。

また、木質構造の環境調和性を考えると、住宅用、非住宅用を含めた地域産構造用材の持続的安定供給体制の整備も重要です。これを実現して行くためには、木材資源管理や木材加工における取り組みだけではなく、建築設計・施工の視点に立った各種の技術提案や異業種間情報共有も必要です。

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