2018年5月22日

No.175 断熱性能を示す Q 値、U A 値とその単位

ちょっと真面目チョット皮肉 175

石山祐二 *

断熱性能を示す熱損失係数 Q(キュー)値は 1980(昭 55)年以来用いられていたが、 2013(平 25)年から外皮平均熱貫流率 U A(ユーエー)値が用いられている。

Q 値とは、(図の矢印で模式的に示した)建物の内部から外部へ逃げる熱量 E を延床面積 A f(図 a の黒太線)で除した値である。

この E は内外部の温度差が 1 度の際に、建物から外部へ単位時間に逃げる熱量(熱損失量)の総和である。その単位は W/K で、 W はワット、 K はケルビン(絶対温度)である。もっとも、温度差を用いるので、絶対温度でも摂氏でも変わりがない。

(1) 屋根・天井、 (2) 換気、 (3) 外壁、 (4) 床、 (5) 開口の各部位から逃げる熱量は、各部位の面積と熱貫流率の積に外気係数(例えば、床: 0.7、その他: 1.0)を乗じて求める。ただし、換気については換気回数( 0.5 回/h)と気積(室内の空気の総量)の積に係数( 0.35 )を乗じて求める。

一方、 U A 値は熱損失量 E’E とは異なり、熱貫流率から計算できない換気による熱損失を含まない)を外皮等面積 A e(図 b の黒太線)で除した値である。

図 熱損失(矢印)と計算に用いる面積(黒太線)

結局、 U A 値は建物外皮の平均的な熱貫流率である。

「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(建築物省エネ法)の基準では, Q値の基準値は札幌を含む北海道の大部分で 1.6、東京以西の大部分で 2.7 であった。 U A 値の基準値は、北海道で 0.46、東京以西で 0.87である。

Q 値から U A 値になったのは、 Q 値は換気装置の影響が大きく、断熱性能のみを評価した方がよいとの判断があったからである。しかし、 U A 値のみで冷暖房に関する性能がすべて分かるわけではなく、冷房効果に重要な日射の影響を表す平均日射熱取得率 η A (イータエー)値があり、東京の基準値は 2.8 である。 Q 値と U A 値は、小さいほど断熱性能がよい。 η A は、冷房時には日射を防ぐため小さい方がよいが、暖房時には大きい方がよい。

門外漢として、このようなことを書いたのは、 Q 値・ U A 値などについて知りたかったからである。ネットで調べると、大体のことはすぐに分かったような気がするが、正確には分かり難いのである。

分かり難い原因の 1 つは単位の表示にある。例えば、 Q 値と U A 値の単位が W/m2K などと書かれている。 W はワット、 m2 は面積と推察できるが、 K がケルビン(絶対温度)であることを(その専門家には常識かも知れないが)書くべきであろう。さらに、熱貫流率に K を用いている場合があり、混乱してしまった。なお、国際的には熱貫流率に U を用いており、日本でも(以前は K を用いることもあったが) U を用いるようになった。このようなことが分かり、記号 U A は国際的に熱貫流率を表す U に平均( average)を表す添字 A をつけたものであろうと気が付いた次第である。

余計なことを書いてしまったが、結局、単位は W/(m2K) または W/m2/K であることが分かるまでには、かなりの時間を要した。技術的な記述は専門外の人にも分かり易いように、かつ数式・記号・定義などを正しく書いて欲しいと思った次第である。

最後に、 U A 値と η A は小さいほど省エネ性能が高くなるということが分かっても、冷暖房に必要な費用・電力量などを簡単に計算できるわけではない。これらの数値は便利であるが、一般人にも分かり易く納得できる新しい指標ができることを期待している。


*いしやまゆうじ 北海道大学名誉教授
(一社)建築研究振興協会発行「建築の研究」 2018.4 原稿

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