2016年8月27日

No.167  北海道新幹線と青函トンネル

ちょっと真面目チョット皮肉167

石山祐二*

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写真 1  新函館北斗駅南口(正面)

2016 年 3 月北海道新幹線として新青森と新函館北斗間の 149km が開通した(写真 1, 2)。これは単に新幹線が北海道まで延長されたのではない。新幹線規格で建設された青函トンネル(全長< 54km)に、ようやく新幹線が走るようになったのである。

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写真 2  新函館北斗駅に停車中の新幹線

青函トンネルの歴史を振り返ってみると、構想は戦前からあったが、具体的になったのは戦後で、地質調査が地上部では 1946(昭和 21)年、海底部では 1953(昭和 28)年に開始された。

1954(昭和 29)年に発生した洞爺丸台風(青函連絡船洞爺丸の遭難による犠牲者1,155 名他、死者・行方不明 1,430 名)により、建設計画が本格的になった。1963(昭和 38)年に試掘(しくつ)調査が着手され、その後 1964(昭和 39)年に発足した日本鉄道建設公団により工事が進められた。津軽海峡の深さ 140m の下 100m にある海底トンネルの掘削(くっさく)工事は容易ではなく、異常出水が 1969(昭和 44)年頃から度々発生し、工事計画が何度も見直された。 1987(昭和 62)年にようやく完成し、試掘調査の着手から数えると 25 年後の 1988(昭和 63)年に在来線として供用が開始された(これに伴い青函連絡船が廃止された)。

新幹線としては、2005(平成 17)年に新青森・新函館北斗間の工事が着工され、11 年後の2016(平成28)年に開通となったのである。長年の実績がある新幹線ではあるが、北海道新幹線には次のような問題がある。

青函トンネルを含む 82km の区間は在来線との共用で、新幹線が在来線の貨物列車とトンネル内ですれ違う際に、貨物列車のコンテナが風圧で転倒するおそれがある。このため、トンネル内では新幹線の時速は在来線並みの 140km となっている。

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図 1  3 本レールの三線軌条

在来線と共用する区間はレールが 3 本ある三線軌条(さんせんきじょう)(図 1)となっている。新幹線用のレールの幅(軌間、ゲージ) は L1=1, 435mm(標準軌)で、その間に在来線用のレールがあり、その軌間は L2 = 1, 067mm(狭軌)である。その差は L3=368mm なので、隣接レールには十分な間隔があるように思える。しかし、レールの幅は下部で 145mm なので、2 本の隣接レールの間隔は L4=223mm となる。さらに、レールを取り付ける金物があるので、隣接レールの間隔は最小の箇所ではわずか 42mm である。この狭い部分に小さな金属片が入り 2 本のレールを電気的に結んでしまった。このため、信号システムが作動し、赤信号となり、新幹線が緊急停車したという予想できなかったトラブルが発生している。

冬期間には新たなトラブルが発生しないかと心配する人がいるかも知れないが、冬期・積雪については十分対処しているはずである。実際、他の新幹線にはない積雪に対する設備もあり、開通前に冬期間の試験走行も行っているので、多分大きな問題は生じないであろうと思っている。

最後に、青函トンネルは世界最長のトンネルであったが、2016 年6 月に開通したスイスのゴッタルドベーストンネル(全長 57km)が世界最長となった。それでも、青函トンネルは海底トンネルとしては世界一である。


*いしやまゆうじ 北海道大学名誉教授
(一社)建築研究振興協会発行「建築の研究」 2016.8 原稿

連載「ちょっと真面目チョット皮肉」(北海道大学名誉教授 石山 祐二) もくじ(クリック→目次ページへ) No.134 花嫁人形と蕗谷虹児 No.135 清潔で安全なシンガポール No.136 広瀬隆著「東京に原発を!」を読み直して No.137 最近の建物の耐震設計に対する懸念 No.138 日本最北のヴォーリズ建築「ピアソン記念館」 No.128 「赤れんが庁舎」を美しく後世に残そう! No.139 建築と食卓の「bと d」 No.140  津波対策にも New Elm工法! No.142  津波に対する構造方法等を定めた国交省告示 No.141 建物の基礎と杭の接合は過剰設計! No.143 国際地震工学研修50 周年 No.144 ペルー国立工科大学・地震防災センター創立 25 周年 No.27 着氷現象と構造物への影響 No.145 リスボンは石畳の美しい街、しかし・・・ No.146 トンネル天井落下事故の原因 No.147 積雪による大スパン構造物崩壊の原因と対策 No.148 生誕100 年彫刻家佐藤忠良展 No.149 地震工学に用いる各種スペクトル (その1)  :応答スペクトル No.150 地震工学に用いる各種スペクトル(その 2) :  トリパータイト応答スペクトルと擬似応答スペクトル No.151 地震工学に用いる各種スペクトル(その 3)  :要求スペクトルと耐力スペクトル No.152 地震工学に用いる各種スペクトル(その 4): 要求スペクトルと耐力スペクトル No.153 中谷宇吉郎著「科学の方法」:氷の結晶のV字型変形 No.154 新渡戸稲造と武士道 No.155 これからのフラットスラブ構造 No.156 塩狩峠記念館 三浦綾子旧宅 No.157 ニッカウヰスキー余市蒸留所 No.158 三つの人魚像 No.159 ラオスと建築基準 No.160 北海道博物館2015 年4 月開館 No.161  30年振りのプリンス・エドワード島 No.162 道路標識と交通信号機 No.163 童謡「赤い靴」の女の子 No.164 地すべりと雪の上の足跡 No.165 建築物のダイヤフラム、コード、コレクターと構造健全性 No.166 地震による 1 階の崩壊と剛性率・形状係数  No.167  北海道新幹線と青函トンネル No.168 米国の建築基準と耐震規定の特徴 No.169 北海道三大秘湖の一つ「オンネトー湖」は五色湖 No.170 世界遺産シドニー・オペラハウス No.171 シドニー・オペラハウスの構造 No.172 北海道の名称と地名 No.173 鳩を飼わない「ハト小屋」 No.174 ロンドン高層住宅の火災の原因は改修工事!? No.175 断熱性能を示す Q 値、U A 値とその単位 No.176 幻の橋タウシュベツ川橋梁 リンク
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