2015年6月23日

No.160 北海道博物館2015 年4 月開館

ちょっと真面目チョット皮肉 160

石山祐二 *

cyot160_img_0写真1  北海道博物館・正面

北海道博物館(写真1)が、北海道開拓記念館と北海道立アイヌ民族文化研究センターを統合し、2015 年4月に開館した。入り口を入ってすぐに目に付くのがマンモスとナウマンゾウの実物大の骨格標本(写真2)である。展示はこのような非常に古い時代から、ごく最近のものもあり、興味が尽きない。もちろん、アイヌ関連の展示も充実している。

cyot160_img_1写真2  ナウマンゾウの骨格標本

1 階と2 階合わせて約3,000m2 の展示室は、プロローグ「北と南の出会い」から始まり、5 つのテーマより構成されている。第1「北海道120 万年物語」、第2「アイヌ文化の世界」、第3「北海道らしさの秘密」、第4「わたしたちの時代へ」、第5「生き物たちの北海道」となっている。見学はどの順序でも構わないが、「とりあえずコース」で北海道の自然・歴史・文化を簡単に見ても1時間は必要で、各テーマを少し時間をかけて見学すると2~3 時間かけても足りないかも知れない。

札幌市厚別区にある博物館は野幌森林公園の中にあり、レンガ色の外装は周囲の緑と美しい対比をなしていて、愛称は「森のちゃれんが」である。見学の後は周囲に広がる公園内を散策し森林浴をするのもよいであろうし、百年記念塔もあり、大人も子供も終日楽しむことができる。

博物館の前身の北海道開拓記念館は北海道の開道100年を記念して1971 年に開設された。建物の設計は佐藤武夫、施工は丸彦渡辺・戸田建設で1970 年に竣工している。1981 年に施行した新耐震といわれる耐震規定を満足していなかったため、約2 年間休館し、この間に建物内部の改装や筋かいを設けるなど耐震補強も行った(写真3)。耐震的となっても地震の際には建物は揺れるので、貴重な展示品が倒れないように固定したり、テグスを張っているものもある。免震装置が組み込まれた展示台(写真4)も部分的に用いられている。なお、この免震装置付きの展示台は、筆者も参加し北海道立総合研究機構の北方建築総合研究所との共同研究で開発したものである。

cyot160_img_2写真3  耐震補強のため内部に設置された筋かい

博物館を訪れた際には、展示物はもちろんのことであるが、その展示方法、建物の内部・外部、そして周囲の森林などにも注目しながら、見学を楽しんで欲しいと思っている。入場料は大人600 円、高校生・大学生300円、身障者・中学生以下・65 歳以上は無料である。

cyot160_img_3写真4  免震装置が組み込まれた展示台


* いしやまゆうじ 北海道大学名誉教授
(一社)建築研究振興協会発行「建築の研究」2015.6 原稿

連載「ちょっと真面目チョット皮肉」(北海道大学名誉教授 石山 祐二) No.134 花嫁人形と蕗谷虹児 No.135 清潔で安全なシンガポール No.136 広瀬隆著「東京に原発を!」を読み直して No.137 最近の建物の耐震設計に対する懸念 No.138 日本最北のヴォーリズ建築「ピアソン記念館」 No.128 「赤れんが庁舎」を美しく後世に残そう! No.139 建築と食卓の「bと d」 No.140  津波対策にも New Elm工法! No.142  津波に対する構造方法等を定めた国交省告示 No.141 建物の基礎と杭の接合は過剰設計! No.143 国際地震工学研修50 周年 No.144 ペルー国立工科大学・地震防災センター創立 25 周年 No.27 着氷現象と構造物への影響 No.145 リスボンは石畳の美しい街、しかし・・・ No.146 トンネル天井落下事故の原因 No.147 積雪による大スパン構造物崩壊の原因と対策 No.148 生誕100 年彫刻家佐藤忠良展 No.149 地震工学に用いる各種スペクトル (その1)  :応答スペクトル No.150 地震工学に用いる各種スペクトル(その 2) :  トリパータイト応答スペクトルと擬似応答スペクトル No.151 地震工学に用いる各種スペクトル(その 3)  :要求スペクトルと耐力スペクトル No.152 地震工学に用いる各種スペクトル(その 4): 要求スペクトルと耐力スペクトル No.153 中谷宇吉郎著「科学の方法」:氷の結晶のV字型変形 No.154 新渡戸稲造と武士道 No.155 これからのフラットスラブ構造 No.156 塩狩峠記念館 三浦綾子旧宅 No.157 ニッカウヰスキー余市蒸留所 No.158 三つの人魚像 No.159 ラオスと建築基準 No.160 北海道博物館2015 年4 月開館 No.161  30年振りのプリンス・エドワード島 No.162 道路標識と交通信号機 No.163 童謡「赤い靴」の女の子 No.164 地すべりと雪の上の足跡 No.165 建築物のダイヤフラム、コード、コレクターと構造健全性 No.166 地震による 1 階の崩壊と剛性率・形状係数  No.167  北海道新幹線と青函トンネル No.168 米国の建築基準と耐震規定の特徴 No.169 北海道三大秘湖の一つ「オンネトー湖」は五色湖 No.170 世界遺産シドニー・オペラハウス No.171 シドニー・オペラハウスの構造 No.172 北海道の名称と地名 No.173 鳩を飼わない「ハト小屋」 No.174 ロンドン高層住宅の火災の原因は改修工事!? No.175 断熱性能を示す Q 値、U A 値とその単位 No.176 幻の橋タウシュベツ川橋梁 No.177 広瀬隆著「原発時限爆弾」を読んで! No.178 2018 年北海道胆振東部地震とその被害 No.179 地震にも津波にも強いブロック造の現状と将来 No.180  ISO の地震荷重と日本・EU・米国との比較 No.181  日本・ペルー地震防災センターの国際シンポジウムに参加して No.182  フィリピンは破れ・日本は芋?! No.183  ブレーメンの音楽隊とサッカー No.184 時間の単位は「秒,分,時,日,月,年」,その次は? No.185  サッカーボールの形と構造の変化 No.186  円周率を最初に計算したのは? No.187  JIS A 3306 となった ISO 3010「構造物への地震作用」 No.188  建物の整形・不整形を表す剛性率 No.189 水道水が美味しいのはどこ? No.190 設計用地震力の分布を表す Ai の導き方 No.191 美味しかった食べ物とギリシャ文字 No.192 構造物のロバスト性 No.193 ラーメンvsトラスと2つの鉄塔 No.194 久しぶりの海外でコロナ感染! No.195 長さの単位と建築のモデュール No.196 関東大震災100年「大地震とその後の対策」 No. 197 北海道の「挽歌」と「石狩挽歌」 No.198 トルコ共和国建国100年と地震被害 各種ダウンロード リンク
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