2013年11月7日

No.150 地震工学に用いる各種スペクトル(その 2) :  トリパータイト応答スペクトルと擬似応答スペクトル

ちょっと真面目チョット皮肉 150

石山祐二 *

< p style=”text-indent: 1em;”>前回(その 1)で図 1 を示し「 1 階の波形はかなり複雑である。一方、 9階 の最大振幅は 1 階に比べ約 4 倍に増幅され、かつピークが約 1 秒ごとに周期的に表れている。」と書いた。

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図 1 9 階建 SRC 造建物の 9 階と 1 階の加速度 (1978 年宮城県沖地震)
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図 2 周期 T の正弦波

地震動を受けると構造物はいつでもその固有周期 T (図 1 の場合は約 1 秒)で振動するので、応答変位が最大となる時間帯の振動を図 2 のように正弦波で表すと、最大の応答変位 Sd 、固有円振動数 ω ω =2π/Tの関係がある)として、応答変位 y は次式で表される。

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(1)

上式を時間 t で 1 回微分すると速度、 2 回微分すると加速度が次式のようになる。

siki2
(2)

sin も cos も最大は 1 なので、上式から最大の応答速度 Sv と応答加速度 Sa は次式となる。

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sin や cos を微分(または積分)する際には、 (2)式から分かるように、 ω を用いる方が簡単なので、数学的には ω を用いることが多いが、工学的には固有周期 T や固有振動数 f =1/T = ω/(2π )を用いることが多い。

いずれにしても、 Sd , Sv , Sa の間には (3)式のような簡単な関係がある。この関係を利用し、図 3 のように横軸に固有周期 T 、縦軸に Sv をいずれも対数目盛で表すと、同図に示されている左右に傾いた目盛から SaSd も読み取ることができる。このような図をトリパータイト応答スペクトルという。

図 3 トリパータイト応答スペクトル (エルセントロ 1940NS)
図 3 トリパータイト応答スペクトル (エルセントロ 1940NS)

トリパータイト応答スペクトルは、一つの図から応答の加速度も速度も変位も読み取ることができるというメリットの他に、 T =1/f の関係があるので、左右を反転し目盛を逆数(例えば 0.1は 10)にすると横軸が(対数目盛のため)振動数のスペクトルになる。なお、横軸は周期の場合が多いが、振動数の場合もある。

構造物の応答が最大となる時間帯では図 2 のように振幅を正弦波でほぼ表すことができるが、最大の応答変位、速度、加速度を求めると、ここで示した式は厳密には成立しない。このため、上のような式が成立するように求めたものを擬似変位、擬似速度、擬似加速度と表現し、それらを示したものを擬似応答スペクトルという場合もあるが、工学的にはほとんど差異はないので、擬似(pseudo)という表示をしていることはあまりないようである。

(参考文献)石山祐二「耐震規定と構造動力学」三和書籍、2008.3


* いしやまゆうじ 北海道大学名誉教授
(社団法人)建築研究振興協会発行「建築の研究」2013.10 掲載

連載「ちょっと真面目チョット皮肉」(北海道大学名誉教授 石山 祐二) もくじ(クリック→目次ページへ) No.134 花嫁人形と蕗谷虹児 No.135 清潔で安全なシンガポール No.136 広瀬隆著「東京に原発を!」を読み直して No.137 最近の建物の耐震設計に対する懸念 No.138 日本最北のヴォーリズ建築「ピアソン記念館」 No.128 「赤れんが庁舎」を美しく後世に残そう! No.139 建築と食卓の「bと d」 No.140  津波対策にも New Elm工法! No.142  津波に対する構造方法等を定めた国交省告示 No.141 建物の基礎と杭の接合は過剰設計! No.143 国際地震工学研修50 周年 No.144 ペルー国立工科大学・地震防災センター創立 25 周年 No.27 着氷現象と構造物への影響 No.145 リスボンは石畳の美しい街、しかし・・・ No.146 トンネル天井落下事故の原因 No.147 積雪による大スパン構造物崩壊の原因と対策 No.148 生誕100 年彫刻家佐藤忠良展 No.149 地震工学に用いる各種スペクトル (その1)  :応答スペクトル No.150 地震工学に用いる各種スペクトル(その 2) :  トリパータイト応答スペクトルと擬似応答スペクトル No.151 地震工学に用いる各種スペクトル(その 3)  :要求スペクトルと耐力スペクトル No.152 地震工学に用いる各種スペクトル(その 4): 要求スペクトルと耐力スペクトル No.153 中谷宇吉郎著「科学の方法」:氷の結晶のV字型変形 No.154 新渡戸稲造と武士道 No.155 これからのフラットスラブ構造 No.156 塩狩峠記念館 三浦綾子旧宅 No.157 ニッカウヰスキー余市蒸留所 No.158 三つの人魚像 No.159 ラオスと建築基準 No.160 北海道博物館2015 年4 月開館 No.161  30年振りのプリンス・エドワード島 No.162 道路標識と交通信号機 No.163 童謡「赤い靴」の女の子 No.164 地すべりと雪の上の足跡 No.165 建築物のダイヤフラム、コード、コレクターと構造健全性 No.166 地震による 1 階の崩壊と剛性率・形状係数  No.167  北海道新幹線と青函トンネル No.168 米国の建築基準と耐震規定の特徴 No.169 北海道三大秘湖の一つ「オンネトー湖」は五色湖 No.170 世界遺産シドニー・オペラハウス No.171 シドニー・オペラハウスの構造 No.172 北海道の名称と地名 No.173 鳩を飼わない「ハト小屋」 No.174 ロンドン高層住宅の火災の原因は改修工事!? No.175 断熱性能を示す Q 値、U A 値とその単位 リンク
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