2013年1月6日

No.145 リスボンは石畳の美しい街、しかし・・・

ちょっと真面目チョット皮肉 145

石山祐二 *

世界地震工学会議は 4 年ごとに開催されており、2012 年 9 月の第 15 回開催地はポルトガルの首都リスボンで行われた。ポルトガルには地震は起こらないと思っている人も多いかも知れないが、1755 年にリスボン大地震が起きている。約 1 週間の会議には、3 千名を超える研究者や技術者が参加し、研究論文の発表や講演会などが行われた。会議に参加し、前後にリスボン市内や郊外を訪れ、その際に感じたことの一端を紹介したい。

ポルトガルは 15 世紀から始まった大航海時代の先駆者で、日本にキリスト教や西洋の文化を最初に伝えた国である。ポルトガルの全人口は 1000 万強、リスボン市は 50 万程度であるが、近隣の都市を加ると 200 万を超える都市である。リスボンには旧い建物が多く残されており(写真 1)、近代的な建物も多いが、旧い建物の外観をのみを残し改築された建物も多い。街を歩いてすぐに気が付くのが石畳で、公園や歩道の他に車道も石畳で舗装されている部分がある。石畳には 10cm 角位の白い石が主に用いられているが、黒い石で模様や文字を形取っている部分もある(写真 2)。

写真 1  リスボンには旧く趣のある建物が多い。
写真 1  リスボンには旧く趣のある建物が多い。
写真 2  幾何学模様の石畳が印象的である。
写真 2  幾何学模様の石畳が印象的である。

2 週間の滞在中に 1 日は傘が必要なくらいの雨が降ったが、その他は日本ではめったに見られないような、どこまでも透き通った青空であった。リスボンの街並みは、趣のある建物を左右に見ながら、単に散歩していても楽しい。食事も美味しく、ビールやワインも安価、治安もよく、これらの点では文句の付けようがない。

しかし、残念なことに煙草のポイ捨てが多いのである。いたるところで石畳の石と石の間に吸い殻が挟まっており(写真 3)、歩道の植え込みも灰皿のように用いられてた(写真 4)。その上、犬を散歩させる人も多く、犬の落とし物も多いのである。もっとも、観光客の多い旧市街地は比較的きれいに清掃されているので、多くの観光客はこのようなことに遭遇しないかも知れない。

しかし、道路の清掃を公的に行うのも重要であろうが、個人が自ら煙草のポイ捨てを止め、犬の飼い主は落とし物の始末をするならば、(リスボンに限ったことではないが)さらによい街になるのは間違いない。もっとも、慣れとは恐ろしいもので、滞在中に次第に吸い殻も気にならなくなり、歩道の落とし物を自然と避けて歩くようになったが、近いうちに清潔でさらに美しい街となることを期待しながら帰国した。

写真 3  石畳にはポイ捨ての吸い殻が目立つ
写真 3  石畳にはポイ捨ての吸い殻が目立つ
 写真 4  歩道の植え込みは灰皿のようであった。
写真 4  歩道の植え込みは灰皿のようであった。

* いしやまゆうじ 北海道大学名誉教授
(社団法人)建築研究振興協会発行「建築の研究」2012.12 原稿

連載「ちょっと真面目チョット皮肉」(北海道大学名誉教授 石山 祐二) もくじ(クリック→目次ページへ) No.134 花嫁人形と蕗谷虹児 No.135 清潔で安全なシンガポール No.136 広瀬隆著「東京に原発を!」を読み直して No.137 最近の建物の耐震設計に対する懸念 No.138 日本最北のヴォーリズ建築「ピアソン記念館」 No.128 「赤れんが庁舎」を美しく後世に残そう! No.139 建築と食卓の「bと d」 No.140  津波対策にも New Elm工法! No.142  津波に対する構造方法等を定めた国交省告示 No.141 建物の基礎と杭の接合は過剰設計! No.143 国際地震工学研修50 周年 No.144 ペルー国立工科大学・地震防災センター創立 25 周年 No.27 着氷現象と構造物への影響 No.145 リスボンは石畳の美しい街、しかし・・・ No.146 トンネル天井落下事故の原因 No.147 積雪による大スパン構造物崩壊の原因と対策 No.148 生誕100 年彫刻家佐藤忠良展 No.149 地震工学に用いる各種スペクトル (その1)  :応答スペクトル No.150 地震工学に用いる各種スペクトル(その 2) :  トリパータイト応答スペクトルと擬似応答スペクトル No.151 地震工学に用いる各種スペクトル(その 3)  :要求スペクトルと耐力スペクトル No.152 地震工学に用いる各種スペクトル(その 4): 要求スペクトルと耐力スペクトル No.153 中谷宇吉郎著「科学の方法」:氷の結晶のV字型変形 No.154 新渡戸稲造と武士道 No.155 これからのフラットスラブ構造 No.156 塩狩峠記念館 三浦綾子旧宅 No.157 ニッカウヰスキー余市蒸留所 No.158 三つの人魚像 No.159 ラオスと建築基準 No.160 北海道博物館2015 年4 月開館 No.161  30年振りのプリンス・エドワード島 No.162 道路標識と交通信号機 No.163 童謡「赤い靴」の女の子 No.164 地すべりと雪の上の足跡 No.165 建築物のダイヤフラム、コード、コレクターと構造健全性 No.166 地震による 1 階の崩壊と剛性率・形状係数  No.167  北海道新幹線と青函トンネル No.168 米国の建築基準と耐震規定の特徴 No.169 北海道三大秘湖の一つ「オンネトー湖」は五色湖 No.170 世界遺産シドニー・オペラハウス No.171 シドニー・オペラハウスの構造 No.172 北海道の名称と地名 No.173 鳩を飼わない「ハト小屋」 No.174 ロンドン高層住宅の火災の原因は改修工事!? No.175 断熱性能を示す Q 値、U A 値とその単位 No.176 幻の橋タウシュベツ川橋梁 リンク
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