2015年8月20日

2-9 新鮮な外気を生かす器

日中の解放的な生活を可能にする付設温室
日中の解放的な生活を可能にする付設温室

2-9 新鮮な外気を生かす器

吸湿した湿気を外に逃がす必要から生まれた日本の伝統建築には、床下、間仕切壁、屋根裏などのいたるところに通気経路があり、冬の隙間風には悩まされながらも換気不足の心配とは無縁でした。

北海道から始まった冬の環境改善への取り組みが、気密化から始まったのは自然の成り行きでしたが、特に窓の気密化が先行して結露被害が続発し、部屋ごとの強制換気が義務付けされるようになってしまったのは行き過ぎでした。

気密化とは外の冷たい空気が室内入ることを防ぐことではなく、室内の湿った空気が断熱された壁の中に漏れるのを防ぐためのものですから、本来換気や避難口の役割を持つ窓の気密化は、それほど必要ではなかったのかもしれません。

取り入れ空気の寒さを和らげ、湿気を含んだ空気を安全に排除するという点では、床下、土間、付設温室などの緩衝空間に外気を取り入れ、開放された室内に取り入れた後、断熱された排気塔で排除するのが最も賢明で確実な換気法です。

たとえば付設温室に日射があれば、少なくともその時間帯には窓や扉を開放して十分な換気が出来ますし、床下に排熱回収や補助ヒーターがあれば寒さを忘れる換気が出来ます。屋根裏も高温になりやすい場所で、予熱利用が可能な緩衝空間ですが、室内への外気取り入れに自然対流が使えないのが難点です。

「断熱から生まれる自然エネルギー利用」(北海道大学名誉教授 荒谷 登) Ⅰ 自然エネルギーって何だろう 1-1 地球という外断熱された星 1-2 外断熱された地球の特有のエネルギー 1-3 水に秘められた創造の知恵 1-4 氷という断熱材 1-5 目に見えない放射エネルギーと見えない断熱材 1-6 気温の年変動も自然エネルギー 1-7 地域性に富んだ自然エネルギー 1-8 変動から生まれ変化を促す自然エネルギー 1-9 自然エネルギーは全自動の環境保全エネルギー 1-10 温暖化の恐怖 1-11 自然エネルギー利用の難しさとやさしさ 1-12 地域の宝としての自然エネルギー Ⅱ 自然エネルギー活用の器としての建築 2-1 自然に親しむための器 2-2 むらのない環境をつくる器 2-3 自然エネルギーの個性を尊重するための器 2-4 変動から生まれる自然エネルギーを生かす器 2-5 自然エネルギーを環境調整の主役にする器 2-6 昼の光を生かす器としての建築 2-7 夜の光の演出 2-8 湿度調整の器としての建築 2-9 新鮮な外気を生かす器 2-10 無償の富を生かす器としての建築 2-11 自然エネルギーを後世に引き継ぐ器としての建築 Ⅲ 北海道の1次産業の活性化 3-1 典型的な自然エネルギー利用としての農・林・水産業 3-2 1次産業の環境整備に生かされなかった寒地建築技術の蓄積 3-3 ビニールハウスの熱環境 3-4 雪利用の貯蔵技術 3-5 貯蔵と加工のある 1.5次産業の育成と建築技術 3-6 天日干しの魅力 3-7 自動制御不要の氷温貯蔵 3-8 低温乾燥貯蔵の工夫 3-9 断熱材で建物を作る 3-10 規格外品も廃棄物さえもすぐれた自然エネルギーの結晶 3-11 過疎化と疎外を招く大規模化指向 3-12 森を生かすナショナルプロジェクト 3-13 薪利用の建築的な工夫 3-14 地産地消の共同体(コミュニティ) 3-15 北海道の課題としての1次産業の活性化 Ⅳ 持続可能な成長への期待 4-1 弱さを大切にする成長 4-2 持っている特質を生かす成長 4-3 共有の富を育てる成長 もくじ リンク
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